オリオンの刻印 感想一覧へ

サブタイトル「フィールドの向こうに明日が来る」
チョウキンウンズVSシャドウ・オブ・オリオン決着!

やりたいことはやりきった! という回。潔くファンサービスてんこ盛り! 『イナズマイレブン オリオンの刻印』最終回にして大団円!

というわけで感想も長い。余裕で過去最長。感想パートだけで一万九千字越えのハイテンション。
ハイテンションついでに、書くところが他にないので、グッズの感想も挟む。元々アニメ感想部分が長いので文字数的には誤差ということで。
今のところ実用度トップはラゲッジバンド。気に入った。買ってから都合6回飛行機の国内線を利用して毎回手荷物を預けたが、そもそも「白いラゲッジバンド」を使っている人が皆無だったので目印としてオススメ。アニメグッズ感が薄く、キャリーの色も選ばず、けっこうしっかりしている。もっといろんなジャンルで出してほしい一品。
あとサントラ! 良かった! サントラで聞いてもっと好きになった!
今までイナイレ三世代のうち、GOシリーズが音楽面の好みにおいてトップだったけど、かなり追い上げた。GOはピンポイントで強烈にツボをついてくる曲が複数あるのに対して、戦陣は平均点が高い。一枚のCDをBGMとしてダラダラ流すならGOよりアレス/オリオンを選ぶ。
さて、気が済んだのでアニメ感想へ。



 のっけから歓声。テロリストの人質にされている時でさえサッカーに熱狂できる観客たちは骨の髄まで超次元サッカーファンだ。
 いきなりシュート技「ラストリゾートΣ」。カラフルな四体のドラゴンが襲い掛かる。
 ユリカの踏み込み。ゴール前にオリオンの選手が4人並んで、一斉に右足を振り上げ、ハンマーのごとく振り下ろして作り出した風がドラゴンをかき消した。ディフェンス技すら使わず止められてしまった。
 「逆回転の旋風でラストリゾートの勢いを殺したんですね」と相変わらず風の便利さが強調される。灰崎はまたフラストレーションから自分の前髪を引っ張っている。明日人はめげずに愚直に突っ込んでいく。
 明日人の止め絵からの、サブタイトル表示。OPをすっ飛ばし、サブタイトルの読み上げすらない。時間枠いっぱいを本編につぎ込むやつだ。
 明日人が「俺は諦めない!」と、スライディングでユリカからボールを奪う。明らかに奪わせておいたユリカは、ゆるりと振り返る。この髪型は奇妙だけど頭の動きがわかりやすくていいな。
 攻め込む明日人。DFを引きつけてから灰崎にパス。しかし通らない。読んでいたメイサにカットされる。と思いきや、なんとメイサはそのままボールを明日人の足元へ送った。明らかな挑発に、明日人は少し表情をきつくするがすぐ走り出す。
 たちまちタビトにボールを奪われ、またも明日人に返される。「このムダなやりとり、いつまで繰り返す?」オリオン側は、明日人が一回で折れないというなら折れるまで叩くことにしたようだ。
 歯噛みする明日人から、ユリカが素早くボールを奪う。「わかった? 人にはどうにもならない限界がある」ユリカは灰崎、野坂をドリブルワークで抜き去るが、動きを読んで追いついた明日人がヘディングで阻止。
 ボールはフロイの足元へ。そしてルースへ。「サッカーはひとりでやるものじゃない!」「チームの連携は個人技を補う!」高レベルに均質なチームであるロシア代表勢らしい発言。野坂を挟んで青い軌跡を描くパスが通っていく。上がる豪炎寺と明日人。しかしフロイの前方に迫りくるディフェンスが2枚。圧が高く通せない。転んだフロイはすぐに立ち上がってオリオンの背中を追いかける。フロイは息を荒げながらも興奮状態だ。「なんだよこれ」明日人がムードメーカーらしい発言をする。「敵が強いのはなにも今回だけじゃない。めげずに行こう!」天然のフロイはまったく違うことを考えていた。「いや、そうじゃない。驚いているのは、こちらの方の動きさ」
 不思議がる明日人に、マリクが解説する。「そうだね。このチームはさっき結成されたばかりのチームなのに、ずっと前から深くつながり合っているように感じる」一星が参戦。「今回選ばれたメンバーは、中心選手としてマークされていた」そりゃあ、世界レベルのオールスターチームですから。VSオリオン、VS組織腐敗が強調されていて忘れられがちだけど、チョウキンウンズに名乗りをあげた選手の中で国旗背負って戦ったことがない選手は皆無。全員が将来を嘱望される若手であり、実績も潜在能力も折り紙付きだ。「お互いの能力は分析済みだからね」単にサッカーが好きだからとか今は仲間だからではなく、もとより互いに互いを油断ならない強敵と認識し、相手の得手不得手やクセを読み、試合に向けて準備してきたことが、一緒に戦うことにも効果を発揮している。超次元サッカーとも思えぬスカウティングの重要性の高さを誇るシーズンらしい結束のあり方だ。
 「ここにいる全員がサッカーをしているから」「そこに信頼が生まれる」日本勢のサッカー愛に浸るフロイ。「これがサッカーなんだね」転んだフロイを一星が助け起こす。「サッカーはかけがえのない親友に出会わせてくれた」フロイは友達が少ない男なので友情シーンをやろうとなると常に一星が駆り出されていたわけだが、一星は笑顔で「君の親友はもう俺だけじゃない」とフロイから友達少ない男属性をはがしていく。フロイも笑顔でチョウキンウンズの仲間たちを振り返る。
 試合モードの鬼道が「食い下がっていくぞ!」と明日人を鼓舞。まだ表情の硬い明日人。
 オリオンのパスワークを見るマリクが分析。「敵チームの動きは感情によるプレーのブレがない。セオリー通りの動きをする」軍隊ばりの訓練でサッカーを叩き込まれているからか、まだ幼いのに理詰めのサッカーもこなせる前途有望な新人である。鬼道もマリクと同じ見解のようだ。「だがそれは弱点とも言える」野坂がちょっと楽しそうに添える。「僕なら、感情によるブレがない相手より、むしろ感情に大きく左右される相手の方が怖いけど」視線の先には背番号8。「彼のようなね」お前、明日人が大好きだな。イタリア戦で自分のアイディアをひっこめた時にも思ってたけど、野坂の中で明日人の評価はものすごく高い。円堂に対してさえちょっと戦術面を軽く見ているところのある、相手が大人だろうが悪役だろうがわりとひとを舐めてかかる野坂だが、自分の想像を超えてアレスとアレスクラスタの頂点を正面から倒してのけた明日人と剛陣には自分より高いポジションを譲るところがある。たぶん雷門に負けたことで、一種のファンになったわけだ。「彼は、誰よりも強い思いを持っている。それは、人の心を動かし、すべてを変える力なんだ」まあこのセリフあたりも、人っていうか、「人(≒僕)」という辺りだろう。
 野坂の盛り上がりをユリカが断ち切る。「レクイエム」攻め寄せる黒いユニフォームの群れ。
 豪炎寺、マリクがOUT。不動、アフロディがIN。
 鬼道の指示。「冷静になり動きを追えば、次にどう動くかが予測できる」サッカーIQが高いチームじゃないと意味がない指示だ。ハオが納得する。「なるほど。どれだけ高い能力を持っていても、動きが予測できるなら攻略できるかも」オリオン側は無謬の動きだけに、パターンは読みやすい。一方チョウキンウンズには、先手を打てさえすればどうにかできる人材はそろっている。
 影山がご機嫌だ。「敵はどうやらアルテミスの矢に気づいたようだ」
 鬼道がボールカット。さらにアフロディ、灰崎、ハオと、次々にボールをものにする。じわじわと彼我の差が埋まってきたことで、ユリカがいら立つ。
 鬼道が口笛。左右から不動と灰崎が走り込む。たぶんオーバーライドのシュート技「皇帝ペンギン2号 feat.シャーク」チョウキンウンズver。対抗はプロキオンのGK技だ。無数の黒い腕がシュートに掴みかかる。「ブラックシールド」ロゴが実におどろおどろしい。タールのようなものが流れ落ちていくボールは、プロキオンの左手にしっかり収まっていた。
 ゴールは守ったものの、ユリカたちは動揺を隠せない。勝利こそ存在意義である彼女たちにとって、敗北は死にも等しい。イメージの中で、赤い爪と黒い手がユリカの両頬に迫る。イリーナによる呪縛だ。
 シャドウ・オブ・オリオンの攻撃。灰崎とユリカ、目つきと口の悪い銀髪同士でトラッシュトーク。「どうした! さっきの威勢は!」「少し持ち直したくらいで勝てるとでも思っているのか」「なわけねぇだろ!」競り合いは互角。灰崎のボルテージは上がりっぱなしだ。「オレたちの目を見てみろ。この試合が始まった瞬間から、こちとら負けるつもりなんて一切ねぇ!」興奮のあまりアレスの頃の雷門再戦決定時のようにやや芝居がかった口調になっている。それに応えるがごとく、ゴールを守るように綺麗に逆V字型に並ぶ仲間たち。左から、フロイ、鬼道、野坂、明日人、一星、不動、アフロディ。「負けるなんて思ってるヤツは一人もいやしねえ! そもそも大概の試合はピンチから始まる、そういうもんだろうがよ!」孤独のなか独学でサッカーを学び這い上がってきた灰崎、サッカーと友達以外なにも残っていないところからフットボールフロンティアに挑戦した明日人にとって、負け戦からのスタートなど慣れっこだ。こんなものでめげはしない。
 ボールの行方を把握し始めたチョウキンウンズ、的確なダブルチーム(ってサッカーだと何と言うのかわからない。検索はしたけど、サンドディフェンスでいいのか?)でプレッシャーをかけていく。試合が停滞。
 ユリカ、焦るあまりチームメイトからボールを奪い、拙速な速攻。シュート必殺技「ブラックフィールド」。黒い電撃を放ち、赤黒いオーラがボールを包む。影山の意味深なアップ。「まだ早い」ユリカがボールに右手を掲げる。赤いエネルギー塊から、黒いドラゴンのような頭がいくつも出現する。咆哮と共に球を蹴ると、その軌道を黒い化け物たちが追う。ちょっとした百鬼夜行だ。その威力にチョウキンウンズベンチがざわめく。
 迎えうつ円堂は不敵な笑顔でキャッチ体勢を整える。
 アイキャッチ部分は飛ばされてストーリー続行。
 カバーに入るルースとハオに、円堂は「どけ!」と叫ぶ。あえて一対一の勝負を挑んだ。ユリカが「威力を殺しもせずキーパーひとりで止めようというのか。無駄だ!」と威圧するが、円堂はそんなもの毛ほども気にかけない。右手を後ろにそらし、エネルギーを掴んで蓄えると上に突き上げる。「ゴッドハンド!」
 ベンチの豪炎寺が驚く。クラリオも続く。「ダイヤモンドハンドでも止められなかったんだぞ」風丸もどういうつもりかと不思議がる。
 しかし円堂の繰り出すゴッドハンドは無印のゴッドハンドではない。オーラの竜巻の中で右手を突き出し、巨大な手がシュートを掴んだ。ボールのオーラが激しく逆巻きながら左右へ吹き出す。ユリカの分析では、ゴッドハンドでブラックフィールドは止められないはずだが、円堂はしっかり右手でキャッチしていた。「悪い。実はこれはただのゴッドハンドじゃないんだ。あえて名前をつけるなら『友情のゴッドハンド』だな」たぶん緑色の部分が友情成分。その成分提供元は、ゴール付近に立っているルース、ハオ、不動、アフロディ。この技、発動条件がよくわからないが、オーバーライドなんだろうか。Vサインする円堂、「とっさに名前、思いつかなくってな」と茶目っ気を出す。
 アフロディ、視聴者に向けて、円堂からイレブンバンドで指示を受けていたと説明。円堂いわく、「野坂にメッセージの送り方を教えてもらってな」。あ、この円堂は機械音痴の円堂だ。説明書とか読まないでなんとなーく触るんだけど思った通りに動かせないタイプの円堂だ。
 ユリカ、イリーナの影に脅かされ、自分の価値が揺らぐ。硬直していると、ベテルギウスにさとされる。「まだ3点のリードだ」そのフォローを無言で無視する。余裕がない。あとイナイレってむやみやたらに最終戦で敵に3点リードされる展開が好きだよね。
 趙金雲がご機嫌。「円堂君のプレイで完全に空気が変わりましたね」マネージャーたちも希望の火が強くなり始めた。
 鬼道が総攻撃を指示。明日人がボールを持ち、前線と中盤が一斉にあがる。野坂が先行し、明日人とハオが続く。その後ろから不動とルースが別方向へ。木のごとく棒立ちの黒ユニを一人抜いて、明日人→灰崎→アフロディ→明日人とつなぐ。予想外のパスワークにシャドウ・オブ・オリオン勢が動揺する。
 鬼道、フロイがOUT。クラリオ、一之瀬がIN。攻撃力が一段上がった感がある。
 フレッシュな一之瀬は意気揚々「こっちも負けてられないよ!」といきなりシュート技に移行。灰崎、クラリオ、一ノ瀬が膝をつき、三人の中央でボールが青白い光を放ち、三色の菱形のマークが出現。白い鳥の翼を持つ長髪の剣闘士といったいでたちの巨人が、巨大な剣を手に立ちあがる。たぶんマジンの一種なんだろう。マジンが柄を握っていない方の手でエネルギーを集中させると、灰崎、一ノ瀬がボールを蹴り、最後にクラリオを交えて三人でシュート。同時に巨人が剣で突きを繰り出す。シュート技「ペルセウスオーブ」。全員代表国が違うのにいつ三人で練習したんだ。一回クリアした後で最終戦前に戻されてる?青い閃光がゴールに直進する。対抗はプロキオンのGK技「ブラックシールド」。しかし3対1では分が悪かった。ボールがネットに突き刺さり、チョウキンウンズが一点を返す。
 シャドウ・オブ・オリオン勢は事前のシミュレーションとまったく違うのだろう展開に気持ちが追いつけず、焦り、苛立っている。ベテルギウスが「敵のペースに乗せられるな」とユリカをいさめるが、ユリカはあまり聞いていなさそう。絶対に勝つと意気込み、ボールを持つなり攻め立てる。パスをつないで、すぐにシュート技「オリオン・クロスバイパー」を放つ。ハオの反応が遅れる。円堂が気合十分に迎え撃つ。対抗は新キーパー技「スーパーメガトンヘッド」。円堂の回転しながらのヘディング共に巨大な拳によるえぐるようなパンチが繰り出される……って、それキーパーのまま特訓もなしに取得していい技なのか。この円堂、ひょっとして無印シリーズの円堂よりサッカーの才能あるんじゃないか。
 円堂はパンチングで大きく跳ね返ったボールを追いかける。同時に、クラリオ、灰崎、不動がOUT。鬼道、豪炎寺、マリクがIN。円堂がゴールを離れるならすることは一つ。鬼道が楽しそうに言う。「このままいくぞ!」円堂と豪炎寺が応じる。
 鬼道が空高くボールを蹴り上げると、渦巻く暗雲が立ち込める。そこへ飛びあがる豪炎寺、鬼道、円堂。ややもったりした動きの三人同時オーバーヘッドキック。シュート技「イナズマブレイクCG(コードグレイト)」だ。どの辺がグレイト要素なのかはわからない。頭身かな。シュートはカミナリじみた光を引き連れてゴールに突き刺さる。プロキオンは技すら出せなかった。チョウキンウンズがさらに一点詰めた。
 完全に勢いづくチョウキンウンズ。今度はハオのボール保持から必殺技態勢へ移行。ハオ→ルース→マリクが二巡しながら蹴りを加えると、背景が星空に。月のごとく青白く光るボールのそばに、同色のオーラをまとった三人が出現。「ソード・オブ・ダルタニアン」。放たれたシュートは三重の魔法陣をまとい彗星のように星空を駆け、その中心から一振りの黄金の剣(三銃士が元ネタならレイピアの刀身か?)が画面を貫く。これまたプロキオンは対抗技すら出せずゴールを許す。同点だ。チョウキンウンズちっちゃいものクラブ強いぞ。
 マリクOUT、ペトロニオIN。入るなりさっそくメイサを鮮やかに抜くペトロニオ、ベンチメンバーの鑑だ。サポーターでボロボロにされていたはずだがさすがゲームキャラ、もう完全復活である。
 さらにルースOUT、アルトゥールIN。こちらもテクニックは折り紙付き。余裕すら感じさせる表情でタビトを翻弄。
 一之瀬OUT、フロイIN。もう引っ込まされた一之瀬、ひょっとしてTPとGP浪費しないように大技打つ時だけフィールドに出す人員なんだろうか。ストライカーとして買われているのか。
 アフロディOUT、灰崎IN。ここは単に灰崎を少し休ませただけか?
 明日人ボール。対応しきれなかったユリカ、腰を落とし、手の震えをこらえ、地団太を踏んで悔しがる。急に彼女に話しかける明日人。「俺、そのサッカー、違うと思う」あ、前回の反撃だ。今度は明日人の精神攻撃だ。これはユリカの心の闇を陽光で焼き始めるぞ。
 ユリカが振り返ると、背景が謎の大雪原に。そこにはチームメイトのシルエット、そして地平線から半分昇っている太陽を背にした明日人が立っている。ユリカは自分の存在を賭けて訴える。「私はお前たちのように遊びでやっているわけではない! 勝つことが私の存在意義なのだ!」
 明日人が穏やかに指摘する。「でも、君はなにか苦しそうだよ」ユリカが叫ぶ。「戦っているんだ! 苦しいに決まってる!」彼女にとってサッカーは侵略戦争であり防衛戦争だ。しかし明日人はさとす。「それは違うよ。戦いは勝つ日だってあるし、負ける日だってある。負けたら悔しがればいいじゃないか。明日の勝利を目指して、またやり直せばいいじゃないか」ただ今日を目いっぱい生きて、明日を信じる明日人の姿勢は、ユリカにとって到底受け入れられるものではない。目をつむって、肩に力を込めて声を絞り出す。「負けたら、終わりなんだよ! 負けたら存在意義がなくなる、自分がこの世界にいる意味がなくなるんだ!」
 明日人は動じない。まっすぐ、ただ強い目でユリカを見つめる。「なくならない。勝っても負けても、君はそこにいる。俺の胸をくうっと熱くさせてくれる、君はそこにいるんだ!」日野社長のアンチ拝金主義と生命愛をそのままぶつけたセリフだな。
 明日人の強い言葉に触発され、ユリカの胸が光を放つ。ユリカの視界が揺らぎ、世界がフィールドに戻る。自ゴールに集まっていく、一星、明日人、鬼道、フロイの背中。
 シャドウ・オブ・オリオンのスローイン。ユリカボール。頭の中にこだまする、明日人の声。「勝っても負けても、君はそこにいる」ユリカは呟く。「私はここにいる」胸が高鳴る。
 ペトロニオが言う。「熱さは伝導する」アルトゥールが言う。「お前たちの中でも点火したはずだ」ハオが言う。「明日人から生まれた、心の炎が」ちょっと舞台風の演出である。
 ユリカ、振り切るように咆えながら突進。向かってくる明日人。すれ違いざま、明日人の声が再びこだまする。「なくならない。勝っても負けても、君はそこにいる。俺の胸をくうっと熱くさせてくれる、君はそこにいるんだ!」ユリカの視界は、再び謎の大雪原へ。
 棒立ちのチームメイトのシルエットが、ポロポロと剥がれ、刻印以外の部分が本人の色を取り戻していく。同時に、刻印は光りながら消えていく。ベテルギウスが、プロキオンが、そしてユリカの鎖骨あたりにあった刻印までもが。ユリカを中心に、雪景色は草原へ塗り替えられ、空は一段と明るさを増して晴れ渡る。「私はここにいる」明日人による存在全肯定という光に背中から呑みこまれる。フィールドに立つユリカの顔つきが変わった。

 ところ変わってVIPルーム。イリーナが私物化している空間に踏み込む靴。新条達の縄が解かれ、多勢に無勢か、イリーナは無言で立ち上がる。スコーリオがキリッと宣言。「インターポールにより、貴女が不正に入手したデータの押収が完了しました」新条が引き継ぐ。「この会場の制御もこちらの手にある」士郎が少し前のめりになる。「あなたはもう選手たちや観客に、手出しすることはできない」
 イリーナは振り返り、椅子の背に手を置く。「私を止めたことを後悔することになる。世界は過ちを繰り返しているのだ! 私は理想郷を見せてやろうとしたんだ」イリーナは、新興宗教の教祖とビジネスマンの資質はあったが、革命家と心理学者の資質には恵まれなかったようだ。しかもこの発言、会場中と、恐らく世界中継とで思いっきり放送されている。すげえやこの自信。普通の人間には真似できない自己確信。恐れ入った。「この腐った世界に侵食され、身も心も腐りきっていくがいいさ!」呪いを吐き捨てるイリーナ。まさに魔女だ。
 フィールドでは、母の狂態を一方的に聞かされるフロイ。そして、ピッチの外、暗がりを背に光を向くベルナルド。「マーマにも見えるはずだ。父さんが信じたものが」この期に及んでまだ母親に愛情を持って接するベルナルド、めちゃくちゃいい子だな。イリーナはよくこんな心根の優しい男にあれだけ無体な仕打ちができたものだ。

 試合再開。懐かしいフレーズが鳴る。最終回にはシリーズ最初のOP曲がかかるもの。クライマックスだ。
 フロイがユリカからボールを奪う。「父さんが言ったように、僕だって世界を信じてみたい!」去っていく人影、孤独な回想が、一星やユーリやヴィクトールとの記憶で過去に押しやられる。シュート技「イノセントドライブ」のバンクを背景に言う、「母さん、人は人を信じることができる」。
 一星が続く。回想はオリオン1話の日本は負けるとかなんとか充のふりをして悪い顔をしていた頃や、鬼道をハメて臭い芝居をしていた頃。「俺だって、ずっと仲間たちを裏切ってやってきた」そして、円堂の信頼。「でも、そんな俺をみんなは救ってくれたんだ。だから」ザ・ジェネラル発動時に似た黒い背景とポーズ。だがここに来て新技だ。高く跳躍。「俺は仲間たちのために何かをしたいって思う」白い光を引き連れて、上へ上へと昇る。「人が人を想うって素晴らしいことなんだ」なんと一星、9人がかりでストライカーを成層圏に送り込む天空隼弾よりさらに高い場所へ自力で飛んでしまう。地球じゃないどこかの惑星の重力圏を抜け出した。「チェイン2!」あ、これシュートチェインか! 新シュート技「プラネットブレイク」。ムーブはイノセントドライブにかなり近いが、演出の派手さはその比ではない。自分が脱した惑星をシュートで貫通&破壊するという、恐ろしく荒っぽい代物だ。撃つたび星が一個砕ける、まさに必殺技。グランドセレスタ・ギャラクシー強制参加連中が聞いたら泣くぞ。
 今度は野坂のターン。アレスからの回想は初期キャラの特権。過去や病気やアレスプログラムでいろいろと葛藤していた頃の野坂を背景に、「人は過ちを犯すものだ」。このグリッドオメガ初出回である14話はめちゃくちゃ見まくった。たぶん今後もたくさん見るぞ。アレス中盤で一番いい出来の回だった。「だけど、立ち直ることだってできる。僕のように」あ、一応本人にとってこの辺りは本当に黒歴史なのか。あやまち真っ最中に獲得した技でも改心後に平然と使う謎のしたたかさはさすが戦術の皇帝。「向き合って、ぶつりかり合って、心をさらけ出せる仲間がいる限り」背景はすでに世界戦復帰後、一星に手を差し伸べるシーン。明日人との出会いと雷門への敗北あればこそ、野坂はいま生きて輝き、誰かを救える存在になれた。「きっと正しい道を歩める日が来るさ」ここで引っ張り上げた相手からのシュートにシュートチェイン第三弾。「月光丸・燕返し」
 「世界がケンカすんだったらすればいいさ」灰崎だ。FF決勝戦、雷門ユニフォームで野坂と肩をぶつけあう姿。そして、もうちょっと時間が巻き戻り、王帝月ノ宮に惨敗した後の、会場すぐ外、夕日に照らされたやり取り。「どんなケンカしたって人はわかりあえる日が来るんだからよォ!」最後に、野坂から手を差し出すシーン。もしかしてオリオンとの闘争も、灰崎の認識ではこじれにこじれた大人のケンカなんだろうか。認知が小学生っぽい。さすが去年までランドセルの男。「チェイン4!」単独必殺技は「シャーク・ザ・ディープ」。
 この流れで来たら締めは明日人しかいない。「俺たちは、国とか人種とかみんな違うけど」……え!? イナズマイレブンワールドに人種という概念が存在しているの!? 融通無碍な体型と横紙破りな髪や目の色かたちが乱舞する異世界に、一体全体どんな人種の分類が!? カルチャーショックだ。ともかく、中国人のハオ、スペイン代表のクラリオ、アメリカ代表を乗っ取ったアメリカ人のコブラ、ブラジル人のアルトゥール、イタリア代表(なのになぜロシア人の手下だったんだろう?)のペトロニオと、世界相手に戦う中で得たライバルを振り返る。「サッカーのおかげで繋がれて、こうやって強くなれたんだ。だからきっと、人はひとつになれるよ」明日人は、金なし親無しグラウンドなし、もうサッカーしかないアンダードッグだったアレス1話から作中数か月を経て、世界の頂点で狂女の野望を砕くところまで駆け上がった。「チェイン5!」
 シャーク・ザ・ディープの青黒いオーラをまとっていたボールが、明日人のひと蹴りで光を放ち、激しく帯電する。「サンライズブリッツ」今度こそは人を救うためのシュートだ。上下逆さの体勢で、右手をピストルの形にして撃つ。
 5つのシュート技の威力が乗ったボールがオリオンゴールに向かう。ディフェンダーたちは技を出す間もなくエネルギーに吹き飛ばされた。プロキオンが対抗する。「ブラックシールド」。しかし単独技ではあまりに非力だった。奮闘虚しく弾き飛ばされる。ネットとボールの間に、ユリカが割り込む。彼女の意志も生半なものではない。裂帛の気合で「塵になろうと通さない!」と右足で蹴る。ボールは光を失っていないが、止まった。
 そこへ明日人が飛び降りてくる。明日人もまた右足のキックで、一つのボールを挟み二人で一撃を加え合った。わずかにユリカが押し返したかと思われたボールは、しかし明日人に押し込まれた。
 ゴール。4-3でチョウキンウンズの勝利。興奮の実況。立ち尽くすユリカ。
 大喜びの世界代表メンバー。跳ねるハオと円堂。鬼道はクールに勝利の喜びを噛み締める。女子マネが手を取り合い、析谷もガッツポーズ。伊那国雷門勢も大はしゃぎで、小僧丸すら豪炎寺リスペクトムーブをどこかに投げ捨てて拳を握る。灰崎が髪を揺らして後ろを伺えば、フロイ、豪炎寺、一星、野坂も仲間と感動を分かち合っている。一星はひときわ嬉しそうだ。ラテン男たちが意気投合。こんな時でも、趙金雲だけは普段通りうさんくさい。「実に面白い試合でしたね」このツンデレめ。素直に喜べ。
 とくに何もしていないオリオンベンチのウラジミールが、目の前の現実を信じられず立ち上がったまま問う。「奴らはなんなんだ」影山が立ち上がり答える。「英雄だよ。揃いも揃ってな」イナズマイレブンじゃないのか。そして、仮にも自分のチームが負けたというのに機嫌が良い。明日人たちや海外勢には影山とその師の円堂、ひいては雷門と帝国の因縁などまるで関係なく、オリオンはオリオンで一秒も自分では育成していないチームなので、完全に他人事として楽しんでいたのかもしれない。あるいは、影山にはアレスプログラムの効果が出ているのかもしれない。
 ユリカには敗因がわからない。震える手でユニフォームの刻印を掴む。明日人がさとす。「言っただろ。勝てないんじゃない。今日負けただけだ」ユリカはなおも吹き込まれたことを口にする。「負けたものに価値はない」明日人はめげない。「負けたら、練習して次の勝ちを狙えばいい」勝利至上主義者にお説教する大変さのひとつは、本人が負けるまでは(時には負けた後でさえ)その考えを曲げないことだ。「だけど負けたら終わりなんだ」ユリカは、使徒としての自分を否定しないためには、負けた今の自分が無価値なことを証明しなければいけない。葛藤している。
 だがそんな葛藤は明日人には関係ない。「負けたって、次に勝てることを信じて、歩くことをやめなければ、終わりじゃないんだ」たとえ対戦相手がいなくとも、肉親が死のうとも、サッカーする場所がなくなろうとも、やってくるチャンスを掴むことを諦めない男だ。金で買えるような信念の持ち主ではない。
 とうとつにスタジアム上部にひび割れが走る。爆発。ずり下がってくる天井部。とんだ安普請だ。電気系統にも故障があったか、照明が消えて会場内はひどく暗くなる。
 氷浦が「最初の爆発で支柱が傷ついた!?」と推測するが、それならイリーナかその部下が火薬の使用量を誤ったことになる。あるいは最初から施設ごと全員吹っ飛ばすつもりでいたのかもしれないが。ともあれ、このままだと死人が出てもおかしくない崩落事故になる。そこへ趙金雲が「皆さんのお力をお借りしましょう」と、円堂をピックアップ。
 まだ律義にゴール前に突っ立っていた円堂が、珍しく察し良く応じる。小さく笑うと、フィールドから呼びかける。「サッカーの力を使ってみんなを守るんだ!」超次元展開きたきた。真心こめてボール蹴っときゃどんなピンチもなんとかなる!
 珍しく、主人公トリオが円堂より察しが悪い。「サッカーを使って」「みんなを守る」「だと?」と、三つ子キャラのごとく一つの疑問を三分割して喋る。息ピッタリだな。
 趙金雲の忠実な弟子たち、中国チームの観戦勢がすかさずボールかごを押して登場。ハオもしっかり働いている。健気である。
 すでにボールを一つ持った円堂が、試合中よりもリーダーシップを発揮して「お前たちも一緒にやるんだ! 力を合わせて!」とシャドウ・オブ・オリオンの面々にボールを投げ渡す。呆然としていた彼らはリアクションの薄い状態で素直に受け取る。そして、フィールドになだれ込む、チョウキンウンズに選ばれなかった世界代表選手たち。
 暗い画面と裏腹に、円堂の十八番「さあみんな、サッカーやろうぜ!」が元気に放たれる。応じるかけ声が、男性声優率の高さからわりと野太い。足元が光る。選手一人ひとりが光って、遠くから見ると光の粒の円を描いている。光っているのは、ボールだ。
 明日人が「いっけー!」と真っ先に光球を蹴り上げる。OPのあのムーブだ。輪になった選手たちが一斉にボールを蹴り上げる。これもサッカーらしく、ほとんどが笑顔だ。次々天井に着弾。光が天井部に完全に浸透すると、天井はさらに大きくひび割れた後、外側に向けて爆発四散。晴れ渡る青空が現れ、明日人が太陽を仰ぐ。さすが肉親が死んでも犯罪者に拉致されても空に雲一つ増えない、とことん太陽に愛された主人公だ。
 明日人は、太陽の眩しさに手をかざしながら笑う。画面にきらきらした光の雪のようなものがしきりと降下しているが、たぶん天井の破片だから危ない。目や気管に入らないよう気をつけるんだ。
 ユリカは、自分の心を覆っていた暗闇から解放されただろうか。ただ無言で空を見上げる。
 風丸が「危機は乗り切ったようだな」と言えば、円堂も応えて「違う国の選手たちが力を合わせてみんなを守った。これって、すごくねぇか?」と、これまで登場してきたライバルたちがずらりと並ぶ列を見渡す。鬼道、豪炎寺も話をまとめにかかる。「サッカーは人の心をひとつにできる」「ひとりでは超えられない壁を乗り越える、大きな力を生む」
 明日人が嬉しそうに言う。「これがサッカー、なんですね!」円堂の答えは決まっている。「ああ、これがサッカー、だな!」
 明日人を呼ぶ声。ユリカだ。見れば、シャドウ・オブ・オリオンが全員集合している。代表として、ユリカが話す。「今日は負けたけど、私たちも、勝てるときを目指して進むよ」子供の良いところは素直に変化できるところだ。「そしたら、また君に挑戦しても、いいかな」心境の変化から、口調まで優しくなっている。
 明日人は微笑み、ライバルとして応える。「ああ。俺だってそう簡単には負けないぞ」相変わらず爽やかに、まったく下心も嘘偽りもなく生きているからか、女性キャラとフラグが立たない男である。
 一件落着。

 ということで、さっそく会場外ではテロリストであるイリーナが連行されていく。走って追いかけるベルナルド。本当にいい息子だ。「待ってくれ!」フロイも一緒だ。「罪は私にも」とついていこうとするベルナルドを、イリーナが突き放す。「お黙り!」振り向くイリーナは、左右からインターポールに見られつつも、光を浴びている。「私の言いなりだった貴方が、でしゃばる必要はない」いや、実行犯だって裁かれますが。とはいえ、どうもイリーナなりにベルナルドをかばっているようだ。さらに、「貴方なら、ここからオリオンを立て直すなんて、造作もないでしょう」と珍しく長男を褒める。どうした。そんなに趙金雲に負けたのがショックか。しかも、しおらしく「あの人の夢を叶えてあげて、ベルナルド、フロイ」と夫の夢を息子たちに託した。
 フロイが驚き、一瞬歯噛みすると、母に一歩だけ駆け寄る。「父さんが信じていたものは、これだったんだね」穏やかな微笑み。イリーナがベルナルドを床に転がしたまま、フロイを振り返るシーンでの怯えは、もうどこにもない。「僕には見えたよ。ふたりが目指したものが」
 今度はベルナルド。「マーマ! 人が信じあえる日は、きっと来るさ」ベルナルドは、母に厳しすぎる教育で支配され、まだビッグビジネスを背負って立つには若すぎるうちに父の死で跡を継ぎ、これから母のテロの尻拭いをしなければならないというのに、なおも両親を素直に慕い、信じている。一家の中で一番いい子で一番優秀な子が、盛大に割を食っているようだ。頑張れベルナルド。初登場時は嫌な大人ポジションだったが、今となっては子供たちの中ではお兄ちゃんという位置づけの子供ポジションのキャラにしか見えない。五年経ったら道成や佐久間といい酒が飲めそうだ。
 イリーナは、もはやベルナルドの顔も見ず、ひどく低い、人間不信を伴った声で、「だといいわね」と吐き捨てながらも、光へと向かっていく。
 話す兄弟。「兄さんはこれからどうするの」「父さんの志を継いで、オリオンを立て直す」「兄さん。僕にも協力させてくれないかな?」ベルナルドは笑って、小さな可愛い弟のひたいをつつく。「もちろんだ」とはいえベルナルドも何らかの罰は下るだろう。無罪放免とはいくまい。金で解決するだろうが。
 趙金雲はあいかわらず飄々としている。「いい戦いでした。それにしても、またお会いできて光栄です」相手は影山零治。珍しく試合が終わっても芝の上に残っている。「私を呼んだのはお前だな?」「お~! さすが影山さん、気づいていたんですねぇ!」趙金雲は素っ頓狂な声を上げて揉み手するが、影山は一瞥もくれない。すぐ本題に入る。「魔女の指示をハッキングしてすり替えた、というところか」趙金雲は否定しないことで肯定する。「この世紀の一戦を私と戦える相手は、あなたしかいませんから」趙金雲の、監督としての手腕の自負と、それに匹敵する相手として特別視する影山という関係性は、これまでの影山の世界には無かったもののように思える。
 ひょっとして、影山は初めて、黒い因縁なしに、監督として良きライバルを得た世界を生きているのでは? 吹雪弟が生きているように、吉良の本当の息子が生きているように、影山の唯一の好敵手が生きている世界が、戦神軸なのでは?
 食えぬ男二人が並んで、観客席が空っぽになった、明るいサッカーグラウンドを眺める。「何しろ、私にサッカーを教えてくれたのは、あなたなのですからね」ちょっと待て趙金雲! 高笑いしてないでその因縁を詳しく教えろ! ものすごく気になる。時期は、趙金雲が軍人やめた後か野球選手やめた後くらいか? ものすごく見たい! ゲームでできないなら青年誌かなんかでスピンオフ連載してくれ。客層からするとゲームに実装するより無茶だとか言うな。食えないオッサンの若いころのバディものなんて美味しいネタじゃないか。なにか展開しないのか? してくれ。しないなら私が同人誌書くぞこの野郎。ちょっと興奮してしまったじゃないか。
 チョウキンウンズは、ピンチを切り抜け、黒幕が連行されて緊張が解けたのか、上からジャージひとつはおりもせずピッチに座ってだべっている。「FFIの優勝はいったいどうなるんだ?」「さあ、どうだろうね。FFIは思わぬ方向に行っちゃったけど」「でも、そのおかげで得られたものもある。ここにいる皆と出会えた」
 改めてサッカーに感謝する一星に続いて、明日人が言う。「サッカーをやっているおかげで、たくさんの出会いがあった」立ち上がって、「一番会いたかった人にも会えた」。向かう先には新条。「父ちゃんは、サッカーを守ったんだね」お前だよ、お前。サッカーを守ったのは選手である明日人の方だ。
 新条は息子からの評価を素直に受け取らない。「一時はサッカーを汚しもした。しかし……」回想。観客席に、ジャケットを腕に下げた新条。星章VS雷門戦だ。「日本で戦っていたお前の存在が私を引き戻したんだ」そんなに最近になってようやく決意したから、詰めの甘いスタンドプレーになったのか? 「まっすぐに戦うお前の姿が、私にオリオンと戦う勇気をくれたのだ」……メンタル弱い新条が百合子に惹かれる気持ちはすごくよくわかるんだが、百合子がなぜ新条を選んだのかいまだにわからないぞ。都会に疲れ切っていたのか? 声フェチなのか? 正直ただのフェチズムって言われた方がすっきりする。
 過去は過去。新条もさすがに表情を少し明るくして、「明日人」とわずかに腕を広げる。父の胸に抱き着く明日人。明日人は瞳を潤ませて、しまっていた想いをぶつける。「なんでさ、なんで会いに来てくれなかったの?」
 「実はな。伊那国島には何度も帰ったんだ」なのに死んだことにされているって相当だと思うんだが。回想。小さい頃の伊那国雷門メンバーたちが、浜辺でサッカーをしている。見守るのは百合子とのりかの母。広い空、青い海に、海鳥が舞う。ほのぼのとした島の光景だ。母である百合子に、両腕を広げてかけよる明日人。それを、離れた木陰から見ている新条。田舎の炎天下でも頑なにスーツ。融通が利かない。これで話しかけないとかただの不審者じゃないか。「母さんとお前の姿を見て、安心してまた島を去った」声をかけろよ不審者。しかも妻(元妻?)と息子を遠くから見て安堵しているシーンなのにわりと無表情。
 というか、百合子は本気で新条を見捨てるような人ではないだろうし、幼児に至っては父親の仕事の良し悪しとかいう概念はないだろうに、ここまで近づいておいて声すらかけられないとは。腰が引けすぎている。自分に自信がなさすぎる。イナイレにアレな親は数あれど、意気地なしとコミュ障を併発したというただそれだけの理由で14年くらい我が子に会わないパターンは初めてじゃないか? もしかして百合子が結婚した理由って、新条のコミュニケーションスキルの低さを放っておけなかったからか?
 「お前たちに合わせる顔がなかったんだ」新条の中でだけな! 息子にとってはそんなの関係ないからな! 「サッカーに夢をかけて島を離れた。いや、家族を捨てた」あれ、東京で暮らしていたのでは? 一緒に島で住んでいた時期もあったのか? そして背景は、真人の回想シーンの、真人が新条に差し変えられたもの。そんなミスリードありかよ。「そんな私はいま何をやっているんだとね。だから戻れなかったんだ」最初にこの辺りのシーンを見た時にも思ったけど、新条、やっぱりちょっと頭悪いだろ? 身体能力と頑健さだけが売り、メンタル弱めで戦術面ペラペラの選手だっただろ?
 「オリオンを正したら堂々と戻るつもりだった。そうすれば、お前たちに顔向けできると思っていたんだ」もし趙金雲がいなかったらあと何年かけるつもりだったんだ。勇気を出して帰ると決めたんじゃなく、勇気を出して結果を出したら帰ることを許すと決めたわけだ。自罰傾向のある男だ。新条は涙を浮かべて謝る。「すまない」
 涙は明日人にも伝染する。「俺はどんなカッコ悪くても、帰ってきてほしかった」素直にいい子だ。これだけ放っておいたり思わせぶりな態度を取ったり偽父をデリバリーしてきたり奮闘虚しくイリーナに捕まったりしてきた男に対して、鬱屈もてらいもなく「だって父ちゃんだろ! 俺の父ちゃんだろ!」と肩を震わせる。新条は黙って息子の肩を抱き続ける。

 急に一週間経過。
 一週間前の惨事にも拘わらず、会場は大歓声で、日本VSロシアの再試合の開始を待っている。実況は相変わらず、角間&マクスター。
 観客席にはインターポールお三方とそこに紛れる夏未。もしかして夏未の情報源の一部はインターポールだったのか? 写真を撮る紀村記者。それにしても、爆発とシュートで天井が消滅したはずのスタジアムがよく一週間で試合できるまでに復旧したものだ。たぶんドームではなくなっただろうけど。
 並ぶロシアイレブン。今回もユーリがキーパーだ。
 イナズマジャパンのスタメンは、右からタツヤ、ヒロト、明日人、野坂、剛陣、岩戸、円堂、一星、万作、アツヤ、氷浦。
 試合開始のホイッスルより先に白くフェードアウト。背景は伊那国島へ。相変わらず日差しの眩しい緑豊かな島だ。
 グラウンドでサッカー中の伊那国雷門。もう帰ってきたのか! 雷門ユニのままだが。
 それにしても欲のないことだ。あれだけ劇的な戦いをしてきたのに、練習相手にも事欠く故郷のグラウンドにあっさり戻ってきて、前と同じように楽しくサッカーしている。島を出る以前と違うのは、のりかの髪型、小僧丸の体型、そして新条が木陰から見守っていることだ。
 新条が手に持った紙片を見ていると、明日人が駆け寄ってくる。以前真人に見せられた稲森母子の写真だ。明日人は写真に向かって話しかける。「母ちゃん。俺も父ちゃんも帰ってきたぞ。ちゃんとサッカーも一緒に連れて帰ってきたぞ!」両腕を挙げて達成感を味わう明日人。新条が「きっと母さんも喜んでるさ」と同意。
 「父ちゃんはどうするの?」と、明日人は強いてそばにいて欲しいわけでもなさそうな、さっぱりした口調で問う。新条は「もう一度海外へ飛ぶ。今度こそ、オリオンは世界を救う組織になれるだろう」と理想を新たに、これまでより生気ある表情で言う。「ベルナルドと共に、サッカーを通じて世界の国々をつなぐ架け橋になろうと思う」自分の組織の上司の様づけをやめたようだ。よかったよかった。あれはものすごいブラック臭を漂わせる発言だったから気になっていたんだ。
 明日人はにこっと笑って「そうか。俺はここで応援してるよ」。そして、いつもの希望に満ちた目をする。「俺はこの伊那国島で、もっともっとサッカーを広めてやるんだ」
 親子で拳を合わせる。

 少し時間が経ったか、背景は伊那国島の夕暮れ時。てっぺん崖へのルートらしきものを背景に歩いている。
 アレスのOPと同じカメラの動き。伊那国雷門ユニフォームの明日人が、海に向かって手で作ったピストルを構える。「俺が必要とする限り、サッカーはそこにある。この先もずっと、俺には明日がある。だよな」水平線に残る太陽と共に、ED曲。あ、でもこれ日が登ってきてるところか? ということは夜明け? 朝から元気なことだ。
 通常EDの代わりに、その後をワンカットで説明するタイプの特殊ED。
 FFI優勝記念の集合写真。しばらく潜入のために離脱していた士郎もしっかりいる。トロフィーは明日人が、ボールは円堂が持っている。さすが円堂。キャプテンとして受け取るべき栄誉の証よりもサッカーの根源を選んだぞ。
 ロシアの空港での別れのシーンか。スペイン代表の後ろ、パーテーション越しに、見送りのフロイ、ルース、マリク。ロシアイレブンのジャージを初めて見たが、感じがいいな。ゲームで着せたい。明日人が、フロイ・マリクと手を振り合っている。
 永世学園のお出迎え。永世メンバーがクラッカーを盛大に使用したおかげで、砂木沼、ヒロト、タツヤの三人はテープまみれ。タツヤはヒロトの有様を見て笑っている。
 王帝月ノ宮は、そんなに大はしゃぎしない。野坂が西蔭に持たせた大量のお土産の手提げ袋が目立つ。これは全員分のマトリョーシカがありそうだ。たぶん野坂から渡されようとしている竹見がちょっと引いた感じで驚いている。普段、この二人がどんなやり取りしてるのか見たかったな。
 星章学園は横断幕と花束でのお迎え。言い出しっぺは春奈だろう。こちらでも彼女の写真趣味は健在のようで、まさに集合写真を撮ろうとしている。灰崎がやや抵抗気味だが、左右から鬼道と水神矢に宥められているので、まあ最終的におとなしく撮られてしまうのだろう。
 白恋。スポンサーが菓子屋の特権で、紅白のうさぎまんじゅうがずらり並んだデコレーションケーキが吹雪兄弟を迎えていた。染岡がカットしたケーキを盛り付けている。しかし染岡、白恋制服似合わないな……。なんでだろう。白いモコモコと厳つい褐色野郎属性がミスマッチなのかな。
 帝国学園。ボード片手に颯爽と歩く佐久間の後ろを、源田に肩を押される不動と、それを見て笑っている風丸がついていく。源田が意外に気さくなことと、この不動はどうも帝国ヒエラルキーの下の方にいてちょっと扱いが軽いところが笑える。誰一人、不動の不機嫌顔を気にしていない。佐久間に至っては見てもいない。笑える。仲いいな。男子的な仲良しさだ。
 木枯らし荘。幼馴染が6人も不在だとさぞ寂しかっただろう。半ちゃんがさっそくゴーレムを駆け上がっている。リスか。ここはお土産よりもお土産話が大事な世界らしい。そういえば、百合子とヨネさんの繋がりってなんだったんだ。
 利根川東泉。円堂が坂野上に、まだシュリンクに包まれたままの新しい背番号1のユニフォームをプレゼントしている。喜ぶ坂野上の肩には狸。完全にチームに馴染んでいる様子だが、ちゃんと予防接種とかしてるんだろうか。
 場所不明の青空の下。飛行場の近く。怪しさ満点で意気揚々あるく趙金雲と、その後を荷物抱えて引きずって、ハオが笑顔でついていく。師弟愛である。
 世宇子。逆光を浴びて輝くアフロディ。日本代表ジャージを脱ぎ捨て、世宇子ユニフォームで仲間たちの元に帰る神々しいお姿に、笑いを禁じ得ない。生きてる世界観がイナズマイレブンじゃない。
 動画になった。差し出される書類封筒。
 受け取るのは荷物を肩に下げた一星。差し出したのは新条だ。一星が笑顔で走っていくのは、かつて明日人が、野坂に会いに行く杏奈を尾行した道。ということは王帝月ノ宮行き!?
 フットボールフロンティア本選の開会式のようなシーンになった。各校代表が、パネル前に整列している。会場は満員御礼。カメラが会場をぐるっと一蹴すると、スクリーンに大会ロゴが写っている。秋季フットボールフロンティア。え、秋にもこれだけの規模でやってるの!? すごいなさすが超次元サッカー界。サッカーがビッグビジネスになるわけだ。
 代表勢のアップ。武方三兄弟と西垣。お隣は永世だ。ヒロトもすっかりチームに馴染んでいる。
 白恋では、アツヤがなえに懐かれている。隣の利根川東泉では、しれっとぽん子が最初からいるのに加え、坂野上がゴールキーパーにコンバートしていた。完全に立向居枠だ。
 世宇子はその妙な風体のユニフォームに対して実に平静な態度で並んでいる。隣は帝国学園。佐久間も貫禄が出てきたか、不敵な表情である。
 星章学園では、左曽塚がニコニコ顔。灰崎は腕組み。水神矢が見守っている。
 王帝月ノ宮に、一星がしれっと混じりこんでやる気満々。野坂が着々と手下を増やしていっている! 灰色のユニフォームに、一星の濃い青がちょっと浮いているような気がするが、本人は嬉しそう。野坂も心なしか笑顔。そして相変わらず西蔭の視線が野坂にしか向いていない。
 円堂のアップ。雷門再集結だ。THUNDERのロゴがついた新しい雷門ユニ。フィールドで各々の位置につく懐かしのメンバー。強化委員も留学組もずらり勢ぞろい。
 そして明日人。伊那国も出場権を得て、雷門と戦うようだ。スポンサーはアイランド観光。島袋社長は明日人たちがよほど気に入ったようだ。それにしてもユニフォームの色がパッとしない。どこかの二軍みたいだ。芋や豆の、皮と中身の色合いにしか見えない。汚れる前から土の匂いを感じる……。
 伊那国VS雷門、試合開始のホイッスルが鳴る。
 青空に太陽が燦燦と輝く。
 イナズマイレブンの世界は、いつも最高のサッカー日和だ。



いやはや、尺が短いのを完全に割り切って、ファンサービスに徹しつつ、俺はやりたいことをやりきったぞ!! と言わんばかりの回でした。
どう考えても1クールから2クール分のシナリオが削られてるし、ビッチビチに話が詰まっているので、単純にものすごく出来がいいかって言うとそうでもないんだけど、『お前の熱い思いは伝わったぜ!!!!』というテンションにストレートに到達できて気持ちよく見終われた。
いや~面白かった。
アレス1話からほぼリアルタイムで見続けて、本当に毎週楽しみにしていたし楽しかった!
関係者の皆様お疲れ様です。楽しませてくれて本当にありがとう。

やっぱり一貫して明日人が好きだな。
ブレない自我強い強メンタル男であり続けた。太陽に選ばれたサッカー小僧というだけあった。太陽は隠れることはあれど輝かない瞬間はない。行く手を遮るすべてを照らしていって、元の場所に戻ってきた。
サッカーはいなくならないどころじゃないな。戦陣軸の締めはもはやこうだ。



  Asuto's in his heaven. All's right with the world.
『明日人はフィールドにいる。すべて世はこともなし』



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