オリオンの刻印 感想一覧へ
サブタイトル「世界よ その手をつなげ」
FFI決勝戦・後編&VSシャドウ・オブ・オリオン前編
警報鳴り響くスタジアム。イリーナはこれを「始めたのよ、革命を」と言う。スコーリオが「そんなことは許されませんよ」と無駄を悟らせようとするが、イリーナは涼しい顔でスタジアム中に爆弾をしかけて選手と観客を丸ごと人質とったことを宣言する。テロリストと交渉しないのは基本。ということでスコーリオはイリーナの発言をハッタリだとはねつける。イリーナは「あら、そう?」とスマホを操作する。
OP
わりとすごい状態の話なのに、アバンはあくまで抑えた調子。戦神軸はよく「もっとこってりやる方が王道だろうな」という場面で抑えた演出を持ってくるよね。
スタジアムの屋根から爆発音、上がる黒煙。当然、真下にいる観客だけでなく、多くの観客が悲鳴をあげる。吊り下げられていた垂れ幕(?)も落下。実にはた迷惑だ。
動揺する観客と選手たち。その中で、趙金雲は「これは何事ですか?」とかすっとぼけているが、絶対にイリーナの手口だとわかってるだろ。
観客席に武装した男たちがなだれ込み、制圧。警棒とヘルメットで威圧感を出しまくっているため、さしもの夏未も何も言えない様子。今度はスタジアムの天井が閉じ始めた。ここ開閉式ドームだったのか。せり出す蓋状の天井から変なエネルギーのようなものが出て、一気に太陽光も照明も消え、暗くなる。続いて天井の照明だけがついて、フィールドだけを照らす。
角間が「おっと! これはいったい何が起こっているのでしょう!? 私たち実況ブースのほうにもまだ情報が入っておりません!」と、あくまで試合中と同じテンションでしゃべり続ける。実況解説の鑑。隣が通常通りだからか、マクスターも眉根を寄せて不安そうではあるが、「スタジアムはただならぬ雰囲気となってしまっていますが……」とやはり実況解説を続ける。
急に巨大なホログラムが出現。布がはためいている。たどった先には、フィールドの上空に君臨する巨大なイリーナの映像。悪役は一回倒されたあと巨大化して復活しなければいけないという特撮のお約束のような自己顕示欲丸出しの仕込みである。新条もこれくらい手際よく準備してから潜入してくれ。
紀村記者が「こんなことができるのは魔女のしわざか」と言うが、イリーナの顔が思いっきり出ているのに魔女のしわざじゃなかったらなんだと言うんだ。
巨大なイリーナはやたらと長い服をひらひらさせながら、「よく聞くがいい、荒んだ世界の住人たちよ」と口上を始める。お前が荒ませてるんだよ。喋るイリーナ像のミニバージョンが次々と増え、意味もなく観客を威圧していく。イリーナによると、ただFFI決勝戦を楽しみに来ただけの世界各国のサッカーファンを人質に国家規模の取引をしようというのだ。はた迷惑極まりない。
気づいたらスコーリオたちは部屋のすみでお縄を頂戴している。メインの告発はインターポールに奪われ、画面上のイケメン度は士郎の方が断然上で、新条は何しに来たんだ。
騒動に気づいて様子を見に来たのか、ベルナルドが潜入三人組の情けない姿に絶句する。イリーナはいつもの調子で「あらベルナルド、いま忙しいの」と軽くあしらう。ベルナルドは何も知らされていなかったようで、「いったいこれは何のマネです?」と遠くから母の背中に問いかける。が、笑うイリーナは交渉に夢中だ。
「この中継を見ている全世界の首脳たちよ、お前たちが所有する全ての戦略兵器を私は把握している。世界平和協定の条約違反の証拠を公表されたくなければ、各国の提示する金額を指定する200の口座に振り込んでもらう」あ、普通にテロリストだ。口座の場所はケイマン諸島かな?
趙金雲が視聴者に向けてイリーナの発言を噛み砕いてくれる。「これが魔女の本当の目的というわけですか。彼女は兵器を隠し持っている国を脅迫しているわけですね」
良い子の杏奈は「これほどのことをお金のために?」と驚く。趙金雲が否定する。「おそらく真の目的は堕落した王を失墜させること」ここだけセリフの世界観がアレスのEDイラストみたいになっているが、そのまま続ける。「堕落した首脳たちをその地位から引きずりおろすつもりです」イリーナも十分に傲慢な堕落した女王だと思うが、同族嫌悪か?
角間の実況がヒートアップ。「これは何かのサプライズイベントなのでしょうか!」警察や各方面に許可を取ってから決行するテロなんかないので、サプライズイベントといえばサプライズイベントだ。
さすがにベルナルドも恐怖をおして母に苦言を呈する。「マーマ、世界を相手に取引などバカげている」一応ビジネスの最前線にいる男の忠告なのでたぶん聞いておいた方がいい。もちろんイリーナが耳を貸すはずはないが。と思ったらベルナルドの横をフロイがつかつかと通り抜け、恐れもせず声を上げる。「母さん! なぜこんなことを、どういうことなんだ?」フィールドからここまで走ってきたのか? やたら早い到着である。
ベルナルドはフロイの肩をつかんで止めようとするが、フロイはなおも母を呼ぶ。しかし「おだまり」の一言で兄弟はすくんでしまう。イリーナは「いいわ。頃合いのようね。話してあげる。私の……いいえ、オリオンの本当の目的を」と偉そうに視聴者への解説を始める。オリオン、この一家のそれぞれに良いように扱われてる組織だな。各人の思想の方向性に統一感が無い。SPの手で扉が閉まり、暗転。
イリーナの回想。新条とヴァレンティンだけのサッカー少年見物放浪かと思っていたら、イリーナも同行しての各国の貧しい子供たちの救済旅行だったらしい。てっきりヴァレンティンは嫁が嫌で気の合う男友達と子供のサッカーに逃げていたのかと誤解していた。といっても夫婦がメインのユニットなら、ますますなんで新条が同行してるんだ……。もっとも、ヴァレンティンと新条が子供たちと触れ合っている間、イリーナは車を降りようとはしないが。
オリオンのチャリティグッズ販売らしい背景。「あの人には貧しい国を支援するという崇高な目的があった。でも私の興味はビジネスだった」ということはベルナルドのビジネスの才能は母親譲りか。イリーナのイメージの大樹が枝を伸ばしてく。「ひとつの国を訪れると、私はその国の財務状況を徹底的に調べた。より有利なビジネスを行うためにね」ガルシルドと気が合いそうだ。もっとも、このパラレルワールドでガルシルドが生きている保証はないが。
ちなみに私がイナズマイレブン3の登場キャラクターで妙に好きなのはヘンクタッカーです。根は善人ないし小物でしかない大半の悪役選手と違って、雇い主かつマフィアの黒幕みたいなものだったガルシルドに恐らく手を下したシーンで感心した。別の雇い主を探すならそうすることによってガルシルドからの復讐を気にする必要がなくなり、かつ一強状態を崩して権力闘争を激化させて台頭してくる人物を雇い主としてピックアップした方がヘンクタッカーに有利だから。そのうえ円堂のサッカー教にも入信しなかった。ヘンクタッカーには裏社会でひとかどの人物になる器があるぞ。負の器だが。ほら、もし同じ「ジョゴ・ド・ビッショに甘さは一切なし」ってセリフを言わせたとしても、ロニージョにはマフィアに集金役をさせられる使いっ走りの悲哀が漂うけど、ヘンクタッカーには指を舐め舐め札びら数える側の気配があるじゃないか。オリオンの設定とも相性が良さそうだったからぜひイリーナの手下として登場して欲しかった。ヘンクタッカーはクセになるぞ。閑話休題。
「政府システムのハッキングも通例になっていた。もちろんあの人に内緒でね」やはり顔がいいとハッカーとして優秀になっていくのだろうか。というか経済の実態見てのビジネスからずいぶん飛躍したな。何かきっかけでもあったのだろうか。「ところがある国を訪れたとき、恐ろしい事実を知ってしまったの」薄手のノートPC一つでホテルみたいなところから気軽にそんな情報にアクセスしているお前が一番恐ろしいわ。
「その国はたくさんの貧しい国民を抱えながらも、兵器開発に巨額の資金を投入し、多くの国と名ばかりの平和条約を結んでいた。そして信じられないことに、多くの国がその国と同じ状況にあった」技術水準が多少低そうな貧しい国で儲けを出せる兵器開発ってなんだろう。今ならドローンによる無人兵器か? そしてカッとなっただけでデバイスを床に投げつけて破壊するイリーナ、若いころから細腕に似合わぬ腕力の持ち主である。
若き日のイリーナが、ワイルドな背景に似合わぬいつもの格好で、ヴァレンティンの背中を見つめている。「あの人は世界に裏切られていたのよ」何かに憤っているイリーナだが、オリオンの思想を骨抜きにした人間が何を言っているのやら。
砂ぼこりで切り替わる背景。家に戻ってきたようだ。何かを夫に訴えかけるイリーナ。「私たちが救った子供たちは、近い将来、兵士となって殺し合うのかもしれない。私はバカバカしく思えてきた。でもあの人の考えは違っていた」
回想の中のヴァレンティンが言う。『イリーナ。私は世界を信じたい。世界はきっと変われる。信じようじゃないか』あまりのお人よしぶりに、イリーナは閉口してしまう。「私にはあの人が愚かな偽善者にしか見えなかった」当然夫婦仲は冷え、やがて別居。ベルナルドとフロイは出ていく母を見ているしかできなかった。妻が出ていってもヴァレンティンは信念を変えず、そのまま世を去った。
イリーナの計画は夫の死と共に始まった。いわく「偽りに塗り固められた虚構の世界を破壊して理想郷を作ると決めた。そう、パーフェクトワールドをね」。お、おう。旦那の何がよくて結婚したのか定かでない人だが、なんというか、イリーナの中には確固たる哲学、なんらかの人生への美意識があって、それに適う部分は好きだったんだろうな。変人すぎてその哲学がどんなものなのか視聴者にはさっぱりわからないけれど。
巨大なイリーナのホログラムが回転して絞られ、裾が膨らんでオーロラ色の空間が現れる。そこに人影がひとつ。歩いてくるのは、ユニフォームに身を包んだ人間。
黒地にオリオンの刻印のマークという、見たことのないユニフォームに、明日人たちが警戒する。
新登場チームの中央にいる、例の新キャラが自己紹介を始める。左端にはウラジミールがいるのでもう露骨にラスボスチームですという感じ。「我らはシャドウ・オブ・オリオン。オリオンの力を知らしめる者だ」遅れて登場してくるのは影山零治。無印キャラがぎょっとする。
イリーナのホログラムがくるくる回る。「世界の結束が本物であるというのなら、ここでそれを証明してみせるがいい」え、金を振り込むかサッカーで勝つかの二択なの? 二択目があったの? イナズマジャパンは「彼らと戦えということか」「それが世界の結束を証明するということになるんでしょうか?」「なんなんだこの状況」と困惑。そりゃそうだ。
ところで、超次元サッカーでノリが懐かしくなって『バトルアスリーテス大運動会(TV版)』をこの間再視聴したんだけど、イリーナってネリリクイーンのシリアスバージョンみたいなものだよね。ジェシーは小僧丸相当、アンナは弟死んでる世界の吹雪士郎、リンファは美少女にした趙金雲みたいなもんだった。ついでに無印二期のレーゼ初登場時、レーゼのキャラクターデザインにデジャヴを感じたけど、あれは脳のどこかでラーリを連想したんだろうな。あからさまに低くした女性声もあって私には同系統のキャラに見えた。
ともかく、タツヤが「落ち着こう。ここは監督の指示を仰ぐべきだ」と冷静そのものな発言で皆の注意を監督に向ける。タツヤはいつも落ち着いているな。
イリーナは「始めるわよ、真実を賭けた聖戦をね」と変人丸出しの宣言をし、さらに息子に向かって「あなたも参加したら?」と煽る。フロイは真剣な顔で「母さん、一つだけ教えて。母さんは父さんのために……?」と問う。「あんな偽善者ぶった老人のために誰が」答えるイリーナの表情はわからない。というか、この夫婦けっこう年が離れていたのか? ベルナルドはイリーナがいくつの時に生まれた息子なんだ。去っていくフロイと、フロイを追うベルナルド。
一方、新オリオンチームのベンチでは、影山がやってくると、今まで座っていたメンバーが蜘蛛の子を散らすように逃げる。それを背景に、趙金雲の拡声器越しの声が響く。
趙金雲は茶化しながらも、各国代表に向かって言う。「世界の平和を守るため、あなたたちには戦士として一肌脱いでもらいたいと思います。」観客が沸く。「これより、世界全チームから選抜する、世界代表メンバーを結成します。今から名前を呼ばれた人は、フィールドに出てきてくださ~い」ずいぶん贅沢なピックアップゲームだ。
駆け込んでくるフロイ。いち早く手を挙げるのは明日人。「監督! 俺にやらせてください!」「僕も、自分の責任を果たしたい!」フロイに続き、次々志願する選手たち。これ、ゲームでは手を挙げたキャラは引き抜いてこの試合で使えるのかな?
出そろったところで、趙金雲はみんなの勢いを少しばかり抑えにかかる。「皆さんのお気持ちはよ~くわかりました。しかしながら、ここは私が監督として、独断と、偏見によって、世界の転覆をたくらむテロリスト一派と戦う、世界代表メンバーを発表します!」激しく回転してポーズをつけると、さっそく発表。
円堂守。稲森明日人。灰崎凌兵。野坂悠馬。豪炎寺修也。不動明王。不動が呼ばれたところで、風丸が嬉しげに声をかける。「不動、ケガは治ったのか?」「ああ。ギリギリ間に合ったな」最後に呼ばれるのは、鬼道有人。これがとびっきりの助っ人だった。沸く観客。出迎える旧雷門三人と不動。これほど遅くなった理由は「少し前に着いていて合流するはずだった。が、影山の入国を知り、極秘裏にヤツの動きを追っていたんだ」とのこと。影山が関わるからには、生半可なものではない。「ヤツの引き受けた依頼は、ヤツの興味を満たすほどに大きいものだった」
ウラジミールが、ねちっこく影山の真意をはかる。「あなたがまさか、我々に手を貸すとは。イリーナ様の考えを支持なさるということですね」影山はストレートには応えない。「大河の流れはたったひとりの英雄によって変わる。このスタジアムに英雄を見に来たのだ」自分の計画のためというよりは物見遊山な様子。しかしウラジミールは、「確かに、イリーナ様は英雄と言えるかもしれませんね」と上司のヨイショに余念がない。
アイキャッチ
明るい青のユニフォームへと着替えたオリオンへの対抗代表がずらり一列に並ぶ。左から、鬼道、アフロティ、不動、風丸、円堂、一星、豪炎寺、野坂、灰崎、明日人、フロイ、マリク、ルース、一之瀬、ハオ、アルトゥール、ペトロニオ、クラリオ。前線が……前線が多い! いやゲームでもこういう構成にしたけど!(シュート技とドリブル技持たせたFW・MFをスタメンの中盤までびっしり&ベンチ3枚ぶちこんで交代させまくってボールキープする戦術ばっかりやってた)それにしても本職DFが風丸ひとりってどうなんだ。フロイ、マリク、ルースはどこにでも置けるのと、ハオが融通利く選手なこと以外は守備に不安しかない。
不安と言えば、趙金雲のネーミングセンス。即興で決めたチーム名は、せっかくハオが「オリオンに対抗するチームなわけですから、アルテミス……」と何か言いかけたのに「チョウキンウンズです」とゴリ押し。こいつ、テロ対抗チームを自分の売名に使いやがった! ツッコミせずにいられない常識人灰崎、虚空を見つめる野坂、目をつむって汗をかいて無視する一星・豪炎寺、ちょっと困った笑顔の円堂・明日人。フロイは頭を抱え、マリクがじっとりと睨み、ルースも変な汗が出ている。
テロップが「チョウキンウンズ VS シャドウ・オブ・オリオン」と書かれ、残念ネーミングが正式採用されてしまった。こんなものでイリーナが動揺するはずもなく、サクサク聖戦の火ぶたが切って落とされる。ルールは特殊で、交代無制限のエキシビションマッチ。ゲーム無印みたいなものだ。
角間は実況魂を炸裂させ、「突然の急展開に私も戸惑っております」と言いつつ、しっかり「ここからFFI決勝を中断し、登録名シャドウ・オブ・オリオンと、実質のFFI選抜オールスターチームともいえるチョウキンウンズの世紀の一戦となります!」と実況。なぜかチョウキンウンズのロゴもしっかり用意されている。明らかに弓矢をイメージしたデザイン、オリオンを射殺すアルテミスの矢にかけたチームだろうに、名前は趙金雲が持って行ってしまった。
シャドウ・オブ・オリオン側は、キャプテンはFWのユリカ。ストライカーのラスボスは鉄板とは言え、女性選手のラスボスはシリーズで初めてか。黒幕も女性だったし、いろいろ試してきたな。
チョウキンウンズ側のスタメンは、円堂をキャプテンに、ルース、マリク、風丸、ハオのDF陣、鬼道、明日人、野坂の中盤、前線はフロイとクラリオと豪炎寺だ。
そうこうしている間にシャドウ・オブ・オリオンのデータも律義に実況席に送信されたため、試合実況が可能に。新条はイリーナのこの無駄な手際の良さを少しは学習してから潜入してくれ。
TPの枯渇を気にしなくていいからか、豪炎寺は「クラリオ。最初から飛ばすぞ」とやる気に火をつける。もちろんクラリオの返答は「ついてこい!」だ。フロイも駆け上がる。しかし、この三人の侵入をシャドウ・オブ・オリオンは見逃す。
さっそくシュートチャンス。クラリオがシュート技「ダイヤモンドエッジ」チョウキンウンズユニフォームバージョンを披露。すさまじい角度でゴールの隅を狙うシュートは、キーパー技すら使うことなくキックひとつで打ち返される。
驚くチョウキンウンズ。その隙をつくようにユリカがボールに駆け寄る。「見せてやろう、オリオンの力を!」と空中のボールを前方に蹴りだし、それを自分で追って加速。風丸とハオがディフェンスに入る。影山が怪しい笑みで開始宣言。ユリカのイレブンバンドが鳴る。ユリカはイレブンバンドに目を落とすこともなく、委細承知とばかりつぶやく。「プレリュード」
ユリカを警戒しすぎて、ワンパスで抜かれる風丸とハオ。ルースとマリクがカバーに入るが振り切られる。ボールは再びユリカへ。ユリカの左手が赤い電撃を放ち、すぐ横に渦巻く影の人型が出現する。ユリカがボールを蹴り上げると、わずかに遅れて人影も跳ぶ。一人と人影が反対に回転しながら同時にキック。新シュート技「オリオン・クロスバイパー」。赤いXラインから放たれる赤と黒の奔流。消える人影。
正面切ってのシュートなので、対抗はもちろん円堂のキーパー技「ダイヤモンドハンド」。勢いを殺しきれず、ボールはネットに突き刺さる。
0-1でオリオンリード。つくしが立ち上がり、杏奈が口を覆い、析谷が絶句するが、趙金雲は食えない笑顔。灰崎も思わず腰を浮かせている。円堂をライバルと認めているクラリオは、ダイヤモンドハンドが一撃で破られたことに衝撃を受けている。
大の字で倒れた円堂のそばに、風丸がしゃがみ、声をかける。どうでもいいけど、風丸のかかとが浮いているので、足の柔軟性が低そうだ。円堂は相手を褒め、その実力の高さを認識しながらも、体を起こし「けどさ。かなわねぇヤツがいるってことは、まだまだ面白ぇことが続くってことじゃないのか?」とニカッと笑う。例によってやたらめったら前向きなサッカーバカである。鬼道とやりあった一星を仲間じゃないかの一言で受け入れた時と同様、風丸は絶句。
一方、中盤勢は分析中。シャドウ・オブ・オリオンがオリオンに染まった特殊部隊であること、速度、当たりの強さ、テクニック、あらゆる能力がずば抜けていることを視聴者に説明してくれる。髪をかきあげていた灰崎は少し落ち着いたのか、どかりとベンチに座りこむ。
試合再開。
珍しく豪炎寺が指示。「落ち着いていくぞ」相手はクラリオ。ここは作中屈指の破壊的ストライカーのラインで実に楽しそう。一旦ボールを戻していくチョウキンウンズ。
豪炎寺→クラリオ→フロイ→野坂。戦術の皇帝が腹黒くない良い笑顔。「鬼道さん、行きますよ」パスを受ける鬼道は、赤いマントをなびかぜつつ、状況を観察。リゲルと小競り合いを演じていた明日人が振り切ってフリーに。その足元にボールが飛んでくる。驚く明日人だが、すぐに適応し、前を行く野坂にパス。明日人は動きやすさに表情を明るくする。
一星の解説。野坂と鬼道という屈指のゲームメーカーが共存しているおかげで、細やかなゲームメイクをフィールドの隅々まで行き渡らせている。滑らかなパスワークでシャドウ・オブ・オリオンの最深部へ到達。肩越しに見つめるユリカのアップ。
鬼道から豪炎寺へのパス。もちろん豪炎寺が放つのは、自らサッカーにおける回答と呼んで憚らないシュート技「ラストリゾート」。迫るボールに、対抗すべきプロキオンは腕組みし、仁王立ちのままだ。風丸も「なぜ動かない」と驚きと不審の入り混じった表情。走ってくるのはユリカ。「コンチェルト」と言うや、ラストリゾートのエネルギーをまとったボールは急停止。真上へ飛んで行ってしまう。鬼道によれば「ゴール前に気流を仕掛けていただと?」。また風が酷使されてる。
ユリカがシュート性のパスでベテルギウスを送り出す。ベテルギウスはハオのスライディングをかわし、ユリカも並走してくる。ハオと野坂はどちらのディフェンスにつくべきか迷ったか。見合っている瞬間にパスが通ってしまう。風丸が警告。「来るぞ!」すかさず明日人がユリカの進路に侵入。「やらせない!」
ユリカが跳躍。空中を蹴って三回ジャンプ。スカイウォークのようだ。高い位置からボールにかかと落としを食らわせ、急角度のノーマルシュートを放つ。反応する円堂、手を伸ばす。しかし触れられなかった。
0-2で点差が開く。
オリオンベンチのウラジミールは得意げだ。「ユリカは頭脳と身体能力が両立した存在。指揮能力、個人技、いずれも他の追従を許さない。これは楽勝のようですね」この楽観的な見方を、画面を操作中の影山は不採用にする。
イリーナはユリカがお気に入りのようだ。「オリオンの技術を結集して作り上げた兵器、感情を捨て、研ぎ澄まされた感覚で敵を粉砕する」と評し、勝利を確信する。
ボールが外に出て、試合中断。チョウキンウンズは軒並み息が上がり、クラリオなどはひざをついている。「すごいね。特にキャプテンのあの子」と明日人が言えば、フロイが急に回想を挟んでくる。「ユリカ・ベオル。僕は昔の彼女を知っている」
まだ弱虫で泣き虫でサッカーが下手な頃の年齢のフロイが、口元に人差し指を当てて、小さなユリカと一緒に急ぐ。ユリカは髪型こそ基本的に変わっていないが、黒いピンで前髪を留め、赤みの差した頬をして、穏やかな表情をしているため、今の彼女とはかなり雰囲気が異なっている。小さなフロイと小さなユリカは、フィールドを見下ろす場所で笑いあう。「前は優しくて平凡な女の子だった」フロイ、例によって例のごとく若干失礼な言葉のチョイスをする男である。平凡って。もうちょっと良い言い回しを考えろ。しかしこの回想を知って、野坂と明日人は痛ましいものを見るような表情に。「きっと変えられたんだ。母さんに。戦うことだけを植え付けられてきた、心を持たない戦士になってしまったんだ」
再びフロイの少し前の時間の回想。オールスターチームに名乗りを上げるべく走るフロイの隣で、ベルナルドが警告。「奴らは戦うことだけを植え付けられた戦闘マシーンだ」
野坂はシャドウ・オブ・オリオンがいかに厄介な相手であるかを認識したようだ。フロイは静かにこぼす。「負けるわけにはいかない」明日人は決意をこめて言う。「でもあいつらだって、人間なんだ」明日人の目には、ユリカはマシーンとは映っていないようだ。
明日人の視線を知らないユリカは、「レクイエム」と宣告し、左手を挙げる。スピードとパスワークであっさりチョウキンウンズのゴール前にはりつき、再び放つシュート技「オリオン・クロスバイパー」。円堂は馬鹿の一つ覚えでキーパー技「ダイヤモンドハンド」を繰り出す。再び後逸。
試合は0-3のオリオンリードで前半終了。
クラリオは試合強度を上げ過ぎたか、額に冷却材を貼っている。「敵の力は絶対的だよ。打つ手なしか」とマリクはしおれ、豪炎寺も打開策は無さそうな顔つきで目を閉じている。「正真正銘の実力だ」雰囲気が悪い中、杏奈からしっかりボトルを受け取っている様子の野坂だけがリア充だ。もっとも、発言は充実どころではない。「こちらを遥かに凌駕する力です」この状況にあっては、さしもの円堂も表情が硬い。
フィールドを見下ろすイリーナは、部屋の隅に縄を打った潜入者三人を並べたままニヤついている。
選手交代。チョウキンウンズの後半の開始メンバーは、FWにフロイ、灰崎、豪炎寺、MFに鬼道、明日人、野坂、一星、DFにルース、マリク、ハオ、GKは円堂据え置きとする。フレッシュなのが灰崎と一星だけで大丈夫なのか。
ユリカがさっそく攻め入る。立ちはだかるのは明日人。しかし、ユリカの起こした竜巻のような風にあおられて、くるくると回転しピッチに倒される。ユリカは8番の背中をボール越しに踏みつける。本格的に精神を折りに来たぞ! そして暗い目つきで「君たちはもう限界だ。無意味な抵抗はよせ」とどちらが軍や警察で、どちらがテロリストなのだかよくわからない威圧をする。さらに、立ち上がろうとする明日人を、今度は直に踏みつけて再び芝に這いつくばらせた。「立ち上がることは無意味だ。君たちが勝てる可能性はゼロなのだから」言葉を失うチョウキンウンズ。
ユリカはボールごと明日人を蹴り飛ばし、悠然と歩いていく。が、この程度のラフプレーでめげる明日人ではない。「待てよ。いいか、よく聞け」と、ユリカに負けず劣らずの声音で反論しながら立ち上がってくる。「立ち上がることが無意味だと言うなら証明してやる」蹴られた左肩を痛めたか? ユリカは平静を装い「へえ、何をかな?」と目も合わせない。もちろん、背を向けられてあしらわれた程度で、明日人が言葉を止めることはない。こいつの自我は強いぞ。「可能性がゼロでも、立ち向かい続ければ、ゼロは1となり、2となり、100にだってなれるんだ!」明日人の力強い発言に、豪炎寺、フロイ、マリク、鬼道がハッとする。「挑戦し続けることで、可能性は無限になる!」
まっさきに円堂が肯定。野坂が微笑み、灰崎も息だけで笑い、一星も瞳を輝かせて、明日人のもとに集まる。なおも無視し続けるユリカ。明日人の名を呼ぶ、チョウキンウンズに入れなかった選手たち。趙金雲が高笑いで「ここからが本番のようですね、ファイナルバトルの」と視聴者に話しかけてくる。
ED入りのBGM開始。オリオンベンチの感じの悪い大人どもが「諦めの悪い奴らです」「いや、まだ奴らはアルテミスの矢を隠し持っている」と意味深な会話。
ようやくユリカが明日人を振り向いたところで、EDへ。
次回の感想 第49話「フィールドの向こうに明日が来る」
前回の感想 第47話「最終決戦の日 それは始まった」へ
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サブタイトル「世界よ その手をつなげ」
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警報鳴り響くスタジアム。イリーナはこれを「始めたのよ、革命を」と言う。スコーリオが「そんなことは許されませんよ」と無駄を悟らせようとするが、イリーナは涼しい顔でスタジアム中に爆弾をしかけて選手と観客を丸ごと人質とったことを宣言する。テロリストと交渉しないのは基本。ということでスコーリオはイリーナの発言をハッタリだとはねつける。イリーナは「あら、そう?」とスマホを操作する。
OP
わりとすごい状態の話なのに、アバンはあくまで抑えた調子。戦神軸はよく「もっとこってりやる方が王道だろうな」という場面で抑えた演出を持ってくるよね。
スタジアムの屋根から爆発音、上がる黒煙。当然、真下にいる観客だけでなく、多くの観客が悲鳴をあげる。吊り下げられていた垂れ幕(?)も落下。実にはた迷惑だ。
動揺する観客と選手たち。その中で、趙金雲は「これは何事ですか?」とかすっとぼけているが、絶対にイリーナの手口だとわかってるだろ。
観客席に武装した男たちがなだれ込み、制圧。警棒とヘルメットで威圧感を出しまくっているため、さしもの夏未も何も言えない様子。今度はスタジアムの天井が閉じ始めた。ここ開閉式ドームだったのか。せり出す蓋状の天井から変なエネルギーのようなものが出て、一気に太陽光も照明も消え、暗くなる。続いて天井の照明だけがついて、フィールドだけを照らす。
角間が「おっと! これはいったい何が起こっているのでしょう!? 私たち実況ブースのほうにもまだ情報が入っておりません!」と、あくまで試合中と同じテンションでしゃべり続ける。実況解説の鑑。隣が通常通りだからか、マクスターも眉根を寄せて不安そうではあるが、「スタジアムはただならぬ雰囲気となってしまっていますが……」とやはり実況解説を続ける。
急に巨大なホログラムが出現。布がはためいている。たどった先には、フィールドの上空に君臨する巨大なイリーナの映像。悪役は一回倒されたあと巨大化して復活しなければいけないという特撮のお約束のような自己顕示欲丸出しの仕込みである。新条もこれくらい手際よく準備してから潜入してくれ。
紀村記者が「こんなことができるのは魔女のしわざか」と言うが、イリーナの顔が思いっきり出ているのに魔女のしわざじゃなかったらなんだと言うんだ。
巨大なイリーナはやたらと長い服をひらひらさせながら、「よく聞くがいい、荒んだ世界の住人たちよ」と口上を始める。お前が荒ませてるんだよ。喋るイリーナ像のミニバージョンが次々と増え、意味もなく観客を威圧していく。イリーナによると、ただFFI決勝戦を楽しみに来ただけの世界各国のサッカーファンを人質に国家規模の取引をしようというのだ。はた迷惑極まりない。
気づいたらスコーリオたちは部屋のすみでお縄を頂戴している。メインの告発はインターポールに奪われ、画面上のイケメン度は士郎の方が断然上で、新条は何しに来たんだ。
騒動に気づいて様子を見に来たのか、ベルナルドが潜入三人組の情けない姿に絶句する。イリーナはいつもの調子で「あらベルナルド、いま忙しいの」と軽くあしらう。ベルナルドは何も知らされていなかったようで、「いったいこれは何のマネです?」と遠くから母の背中に問いかける。が、笑うイリーナは交渉に夢中だ。
「この中継を見ている全世界の首脳たちよ、お前たちが所有する全ての戦略兵器を私は把握している。世界平和協定の条約違反の証拠を公表されたくなければ、各国の提示する金額を指定する200の口座に振り込んでもらう」あ、普通にテロリストだ。口座の場所はケイマン諸島かな?
趙金雲が視聴者に向けてイリーナの発言を噛み砕いてくれる。「これが魔女の本当の目的というわけですか。彼女は兵器を隠し持っている国を脅迫しているわけですね」
良い子の杏奈は「これほどのことをお金のために?」と驚く。趙金雲が否定する。「おそらく真の目的は堕落した王を失墜させること」ここだけセリフの世界観がアレスのEDイラストみたいになっているが、そのまま続ける。「堕落した首脳たちをその地位から引きずりおろすつもりです」イリーナも十分に傲慢な堕落した女王だと思うが、同族嫌悪か?
角間の実況がヒートアップ。「これは何かのサプライズイベントなのでしょうか!」警察や各方面に許可を取ってから決行するテロなんかないので、サプライズイベントといえばサプライズイベントだ。
さすがにベルナルドも恐怖をおして母に苦言を呈する。「マーマ、世界を相手に取引などバカげている」一応ビジネスの最前線にいる男の忠告なのでたぶん聞いておいた方がいい。もちろんイリーナが耳を貸すはずはないが。と思ったらベルナルドの横をフロイがつかつかと通り抜け、恐れもせず声を上げる。「母さん! なぜこんなことを、どういうことなんだ?」フィールドからここまで走ってきたのか? やたら早い到着である。
ベルナルドはフロイの肩をつかんで止めようとするが、フロイはなおも母を呼ぶ。しかし「おだまり」の一言で兄弟はすくんでしまう。イリーナは「いいわ。頃合いのようね。話してあげる。私の……いいえ、オリオンの本当の目的を」と偉そうに視聴者への解説を始める。オリオン、この一家のそれぞれに良いように扱われてる組織だな。各人の思想の方向性に統一感が無い。SPの手で扉が閉まり、暗転。
イリーナの回想。新条とヴァレンティンだけのサッカー少年見物放浪かと思っていたら、イリーナも同行しての各国の貧しい子供たちの救済旅行だったらしい。てっきりヴァレンティンは嫁が嫌で気の合う男友達と子供のサッカーに逃げていたのかと誤解していた。といっても夫婦がメインのユニットなら、ますますなんで新条が同行してるんだ……。もっとも、ヴァレンティンと新条が子供たちと触れ合っている間、イリーナは車を降りようとはしないが。
オリオンのチャリティグッズ販売らしい背景。「あの人には貧しい国を支援するという崇高な目的があった。でも私の興味はビジネスだった」ということはベルナルドのビジネスの才能は母親譲りか。イリーナのイメージの大樹が枝を伸ばしてく。「ひとつの国を訪れると、私はその国の財務状況を徹底的に調べた。より有利なビジネスを行うためにね」ガルシルドと気が合いそうだ。もっとも、このパラレルワールドでガルシルドが生きている保証はないが。
ちなみに私がイナズマイレブン3の登場キャラクターで妙に好きなのはヘンクタッカーです。根は善人ないし小物でしかない大半の悪役選手と違って、雇い主かつマフィアの黒幕みたいなものだったガルシルドに恐らく手を下したシーンで感心した。別の雇い主を探すならそうすることによってガルシルドからの復讐を気にする必要がなくなり、かつ一強状態を崩して権力闘争を激化させて台頭してくる人物を雇い主としてピックアップした方がヘンクタッカーに有利だから。そのうえ円堂のサッカー教にも入信しなかった。ヘンクタッカーには裏社会でひとかどの人物になる器があるぞ。負の器だが。ほら、もし同じ「ジョゴ・ド・ビッショに甘さは一切なし」ってセリフを言わせたとしても、ロニージョにはマフィアに集金役をさせられる使いっ走りの悲哀が漂うけど、ヘンクタッカーには指を舐め舐め札びら数える側の気配があるじゃないか。オリオンの設定とも相性が良さそうだったからぜひイリーナの手下として登場して欲しかった。ヘンクタッカーはクセになるぞ。閑話休題。
「政府システムのハッキングも通例になっていた。もちろんあの人に内緒でね」やはり顔がいいとハッカーとして優秀になっていくのだろうか。というか経済の実態見てのビジネスからずいぶん飛躍したな。何かきっかけでもあったのだろうか。「ところがある国を訪れたとき、恐ろしい事実を知ってしまったの」薄手のノートPC一つでホテルみたいなところから気軽にそんな情報にアクセスしているお前が一番恐ろしいわ。
「その国はたくさんの貧しい国民を抱えながらも、兵器開発に巨額の資金を投入し、多くの国と名ばかりの平和条約を結んでいた。そして信じられないことに、多くの国がその国と同じ状況にあった」技術水準が多少低そうな貧しい国で儲けを出せる兵器開発ってなんだろう。今ならドローンによる無人兵器か? そしてカッとなっただけでデバイスを床に投げつけて破壊するイリーナ、若いころから細腕に似合わぬ腕力の持ち主である。
若き日のイリーナが、ワイルドな背景に似合わぬいつもの格好で、ヴァレンティンの背中を見つめている。「あの人は世界に裏切られていたのよ」何かに憤っているイリーナだが、オリオンの思想を骨抜きにした人間が何を言っているのやら。
砂ぼこりで切り替わる背景。家に戻ってきたようだ。何かを夫に訴えかけるイリーナ。「私たちが救った子供たちは、近い将来、兵士となって殺し合うのかもしれない。私はバカバカしく思えてきた。でもあの人の考えは違っていた」
回想の中のヴァレンティンが言う。『イリーナ。私は世界を信じたい。世界はきっと変われる。信じようじゃないか』あまりのお人よしぶりに、イリーナは閉口してしまう。「私にはあの人が愚かな偽善者にしか見えなかった」当然夫婦仲は冷え、やがて別居。ベルナルドとフロイは出ていく母を見ているしかできなかった。妻が出ていってもヴァレンティンは信念を変えず、そのまま世を去った。
イリーナの計画は夫の死と共に始まった。いわく「偽りに塗り固められた虚構の世界を破壊して理想郷を作ると決めた。そう、パーフェクトワールドをね」。お、おう。旦那の何がよくて結婚したのか定かでない人だが、なんというか、イリーナの中には確固たる哲学、なんらかの人生への美意識があって、それに適う部分は好きだったんだろうな。変人すぎてその哲学がどんなものなのか視聴者にはさっぱりわからないけれど。
巨大なイリーナのホログラムが回転して絞られ、裾が膨らんでオーロラ色の空間が現れる。そこに人影がひとつ。歩いてくるのは、ユニフォームに身を包んだ人間。
黒地にオリオンの刻印のマークという、見たことのないユニフォームに、明日人たちが警戒する。
新登場チームの中央にいる、例の新キャラが自己紹介を始める。左端にはウラジミールがいるのでもう露骨にラスボスチームですという感じ。「我らはシャドウ・オブ・オリオン。オリオンの力を知らしめる者だ」遅れて登場してくるのは影山零治。無印キャラがぎょっとする。
イリーナのホログラムがくるくる回る。「世界の結束が本物であるというのなら、ここでそれを証明してみせるがいい」え、金を振り込むかサッカーで勝つかの二択なの? 二択目があったの? イナズマジャパンは「彼らと戦えということか」「それが世界の結束を証明するということになるんでしょうか?」「なんなんだこの状況」と困惑。そりゃそうだ。
ところで、超次元サッカーでノリが懐かしくなって『バトルアスリーテス大運動会(TV版)』をこの間再視聴したんだけど、イリーナってネリリクイーンのシリアスバージョンみたいなものだよね。ジェシーは小僧丸相当、アンナは弟死んでる世界の吹雪士郎、リンファは美少女にした趙金雲みたいなもんだった。ついでに無印二期のレーゼ初登場時、レーゼのキャラクターデザインにデジャヴを感じたけど、あれは脳のどこかでラーリを連想したんだろうな。あからさまに低くした女性声もあって私には同系統のキャラに見えた。
ともかく、タツヤが「落ち着こう。ここは監督の指示を仰ぐべきだ」と冷静そのものな発言で皆の注意を監督に向ける。タツヤはいつも落ち着いているな。
イリーナは「始めるわよ、真実を賭けた聖戦をね」と変人丸出しの宣言をし、さらに息子に向かって「あなたも参加したら?」と煽る。フロイは真剣な顔で「母さん、一つだけ教えて。母さんは父さんのために……?」と問う。「あんな偽善者ぶった老人のために誰が」答えるイリーナの表情はわからない。というか、この夫婦けっこう年が離れていたのか? ベルナルドはイリーナがいくつの時に生まれた息子なんだ。去っていくフロイと、フロイを追うベルナルド。
一方、新オリオンチームのベンチでは、影山がやってくると、今まで座っていたメンバーが蜘蛛の子を散らすように逃げる。それを背景に、趙金雲の拡声器越しの声が響く。
趙金雲は茶化しながらも、各国代表に向かって言う。「世界の平和を守るため、あなたたちには戦士として一肌脱いでもらいたいと思います。」観客が沸く。「これより、世界全チームから選抜する、世界代表メンバーを結成します。今から名前を呼ばれた人は、フィールドに出てきてくださ~い」ずいぶん贅沢なピックアップゲームだ。
駆け込んでくるフロイ。いち早く手を挙げるのは明日人。「監督! 俺にやらせてください!」「僕も、自分の責任を果たしたい!」フロイに続き、次々志願する選手たち。これ、ゲームでは手を挙げたキャラは引き抜いてこの試合で使えるのかな?
出そろったところで、趙金雲はみんなの勢いを少しばかり抑えにかかる。「皆さんのお気持ちはよ~くわかりました。しかしながら、ここは私が監督として、独断と、偏見によって、世界の転覆をたくらむテロリスト一派と戦う、世界代表メンバーを発表します!」激しく回転してポーズをつけると、さっそく発表。
円堂守。稲森明日人。灰崎凌兵。野坂悠馬。豪炎寺修也。不動明王。不動が呼ばれたところで、風丸が嬉しげに声をかける。「不動、ケガは治ったのか?」「ああ。ギリギリ間に合ったな」最後に呼ばれるのは、鬼道有人。これがとびっきりの助っ人だった。沸く観客。出迎える旧雷門三人と不動。これほど遅くなった理由は「少し前に着いていて合流するはずだった。が、影山の入国を知り、極秘裏にヤツの動きを追っていたんだ」とのこと。影山が関わるからには、生半可なものではない。「ヤツの引き受けた依頼は、ヤツの興味を満たすほどに大きいものだった」
ウラジミールが、ねちっこく影山の真意をはかる。「あなたがまさか、我々に手を貸すとは。イリーナ様の考えを支持なさるということですね」影山はストレートには応えない。「大河の流れはたったひとりの英雄によって変わる。このスタジアムに英雄を見に来たのだ」自分の計画のためというよりは物見遊山な様子。しかしウラジミールは、「確かに、イリーナ様は英雄と言えるかもしれませんね」と上司のヨイショに余念がない。
アイキャッチ
明るい青のユニフォームへと着替えたオリオンへの対抗代表がずらり一列に並ぶ。左から、鬼道、アフロティ、不動、風丸、円堂、一星、豪炎寺、野坂、灰崎、明日人、フロイ、マリク、ルース、一之瀬、ハオ、アルトゥール、ペトロニオ、クラリオ。前線が……前線が多い! いやゲームでもこういう構成にしたけど!(シュート技とドリブル技持たせたFW・MFをスタメンの中盤までびっしり&ベンチ3枚ぶちこんで交代させまくってボールキープする戦術ばっかりやってた)それにしても本職DFが風丸ひとりってどうなんだ。フロイ、マリク、ルースはどこにでも置けるのと、ハオが融通利く選手なこと以外は守備に不安しかない。
不安と言えば、趙金雲のネーミングセンス。即興で決めたチーム名は、せっかくハオが「オリオンに対抗するチームなわけですから、アルテミス……」と何か言いかけたのに「チョウキンウンズです」とゴリ押し。こいつ、テロ対抗チームを自分の売名に使いやがった! ツッコミせずにいられない常識人灰崎、虚空を見つめる野坂、目をつむって汗をかいて無視する一星・豪炎寺、ちょっと困った笑顔の円堂・明日人。フロイは頭を抱え、マリクがじっとりと睨み、ルースも変な汗が出ている。
テロップが「チョウキンウンズ VS シャドウ・オブ・オリオン」と書かれ、残念ネーミングが正式採用されてしまった。こんなものでイリーナが動揺するはずもなく、サクサク聖戦の火ぶたが切って落とされる。ルールは特殊で、交代無制限のエキシビションマッチ。ゲーム無印みたいなものだ。
角間は実況魂を炸裂させ、「突然の急展開に私も戸惑っております」と言いつつ、しっかり「ここからFFI決勝を中断し、登録名シャドウ・オブ・オリオンと、実質のFFI選抜オールスターチームともいえるチョウキンウンズの世紀の一戦となります!」と実況。なぜかチョウキンウンズのロゴもしっかり用意されている。明らかに弓矢をイメージしたデザイン、オリオンを射殺すアルテミスの矢にかけたチームだろうに、名前は趙金雲が持って行ってしまった。
シャドウ・オブ・オリオン側は、キャプテンはFWのユリカ。ストライカーのラスボスは鉄板とは言え、女性選手のラスボスはシリーズで初めてか。黒幕も女性だったし、いろいろ試してきたな。
チョウキンウンズ側のスタメンは、円堂をキャプテンに、ルース、マリク、風丸、ハオのDF陣、鬼道、明日人、野坂の中盤、前線はフロイとクラリオと豪炎寺だ。
そうこうしている間にシャドウ・オブ・オリオンのデータも律義に実況席に送信されたため、試合実況が可能に。新条はイリーナのこの無駄な手際の良さを少しは学習してから潜入してくれ。
TPの枯渇を気にしなくていいからか、豪炎寺は「クラリオ。最初から飛ばすぞ」とやる気に火をつける。もちろんクラリオの返答は「ついてこい!」だ。フロイも駆け上がる。しかし、この三人の侵入をシャドウ・オブ・オリオンは見逃す。
さっそくシュートチャンス。クラリオがシュート技「ダイヤモンドエッジ」チョウキンウンズユニフォームバージョンを披露。すさまじい角度でゴールの隅を狙うシュートは、キーパー技すら使うことなくキックひとつで打ち返される。
驚くチョウキンウンズ。その隙をつくようにユリカがボールに駆け寄る。「見せてやろう、オリオンの力を!」と空中のボールを前方に蹴りだし、それを自分で追って加速。風丸とハオがディフェンスに入る。影山が怪しい笑みで開始宣言。ユリカのイレブンバンドが鳴る。ユリカはイレブンバンドに目を落とすこともなく、委細承知とばかりつぶやく。「プレリュード」
ユリカを警戒しすぎて、ワンパスで抜かれる風丸とハオ。ルースとマリクがカバーに入るが振り切られる。ボールは再びユリカへ。ユリカの左手が赤い電撃を放ち、すぐ横に渦巻く影の人型が出現する。ユリカがボールを蹴り上げると、わずかに遅れて人影も跳ぶ。一人と人影が反対に回転しながら同時にキック。新シュート技「オリオン・クロスバイパー」。赤いXラインから放たれる赤と黒の奔流。消える人影。
正面切ってのシュートなので、対抗はもちろん円堂のキーパー技「ダイヤモンドハンド」。勢いを殺しきれず、ボールはネットに突き刺さる。
0-1でオリオンリード。つくしが立ち上がり、杏奈が口を覆い、析谷が絶句するが、趙金雲は食えない笑顔。灰崎も思わず腰を浮かせている。円堂をライバルと認めているクラリオは、ダイヤモンドハンドが一撃で破られたことに衝撃を受けている。
大の字で倒れた円堂のそばに、風丸がしゃがみ、声をかける。どうでもいいけど、風丸のかかとが浮いているので、足の柔軟性が低そうだ。円堂は相手を褒め、その実力の高さを認識しながらも、体を起こし「けどさ。かなわねぇヤツがいるってことは、まだまだ面白ぇことが続くってことじゃないのか?」とニカッと笑う。例によってやたらめったら前向きなサッカーバカである。鬼道とやりあった一星を仲間じゃないかの一言で受け入れた時と同様、風丸は絶句。
一方、中盤勢は分析中。シャドウ・オブ・オリオンがオリオンに染まった特殊部隊であること、速度、当たりの強さ、テクニック、あらゆる能力がずば抜けていることを視聴者に説明してくれる。髪をかきあげていた灰崎は少し落ち着いたのか、どかりとベンチに座りこむ。
試合再開。
珍しく豪炎寺が指示。「落ち着いていくぞ」相手はクラリオ。ここは作中屈指の破壊的ストライカーのラインで実に楽しそう。一旦ボールを戻していくチョウキンウンズ。
豪炎寺→クラリオ→フロイ→野坂。戦術の皇帝が腹黒くない良い笑顔。「鬼道さん、行きますよ」パスを受ける鬼道は、赤いマントをなびかぜつつ、状況を観察。リゲルと小競り合いを演じていた明日人が振り切ってフリーに。その足元にボールが飛んでくる。驚く明日人だが、すぐに適応し、前を行く野坂にパス。明日人は動きやすさに表情を明るくする。
一星の解説。野坂と鬼道という屈指のゲームメーカーが共存しているおかげで、細やかなゲームメイクをフィールドの隅々まで行き渡らせている。滑らかなパスワークでシャドウ・オブ・オリオンの最深部へ到達。肩越しに見つめるユリカのアップ。
鬼道から豪炎寺へのパス。もちろん豪炎寺が放つのは、自らサッカーにおける回答と呼んで憚らないシュート技「ラストリゾート」。迫るボールに、対抗すべきプロキオンは腕組みし、仁王立ちのままだ。風丸も「なぜ動かない」と驚きと不審の入り混じった表情。走ってくるのはユリカ。「コンチェルト」と言うや、ラストリゾートのエネルギーをまとったボールは急停止。真上へ飛んで行ってしまう。鬼道によれば「ゴール前に気流を仕掛けていただと?」。また風が酷使されてる。
ユリカがシュート性のパスでベテルギウスを送り出す。ベテルギウスはハオのスライディングをかわし、ユリカも並走してくる。ハオと野坂はどちらのディフェンスにつくべきか迷ったか。見合っている瞬間にパスが通ってしまう。風丸が警告。「来るぞ!」すかさず明日人がユリカの進路に侵入。「やらせない!」
ユリカが跳躍。空中を蹴って三回ジャンプ。スカイウォークのようだ。高い位置からボールにかかと落としを食らわせ、急角度のノーマルシュートを放つ。反応する円堂、手を伸ばす。しかし触れられなかった。
0-2で点差が開く。
オリオンベンチのウラジミールは得意げだ。「ユリカは頭脳と身体能力が両立した存在。指揮能力、個人技、いずれも他の追従を許さない。これは楽勝のようですね」この楽観的な見方を、画面を操作中の影山は不採用にする。
イリーナはユリカがお気に入りのようだ。「オリオンの技術を結集して作り上げた兵器、感情を捨て、研ぎ澄まされた感覚で敵を粉砕する」と評し、勝利を確信する。
ボールが外に出て、試合中断。チョウキンウンズは軒並み息が上がり、クラリオなどはひざをついている。「すごいね。特にキャプテンのあの子」と明日人が言えば、フロイが急に回想を挟んでくる。「ユリカ・ベオル。僕は昔の彼女を知っている」
まだ弱虫で泣き虫でサッカーが下手な頃の年齢のフロイが、口元に人差し指を当てて、小さなユリカと一緒に急ぐ。ユリカは髪型こそ基本的に変わっていないが、黒いピンで前髪を留め、赤みの差した頬をして、穏やかな表情をしているため、今の彼女とはかなり雰囲気が異なっている。小さなフロイと小さなユリカは、フィールドを見下ろす場所で笑いあう。「前は優しくて平凡な女の子だった」フロイ、例によって例のごとく若干失礼な言葉のチョイスをする男である。平凡って。もうちょっと良い言い回しを考えろ。しかしこの回想を知って、野坂と明日人は痛ましいものを見るような表情に。「きっと変えられたんだ。母さんに。戦うことだけを植え付けられてきた、心を持たない戦士になってしまったんだ」
再びフロイの少し前の時間の回想。オールスターチームに名乗りを上げるべく走るフロイの隣で、ベルナルドが警告。「奴らは戦うことだけを植え付けられた戦闘マシーンだ」
野坂はシャドウ・オブ・オリオンがいかに厄介な相手であるかを認識したようだ。フロイは静かにこぼす。「負けるわけにはいかない」明日人は決意をこめて言う。「でもあいつらだって、人間なんだ」明日人の目には、ユリカはマシーンとは映っていないようだ。
明日人の視線を知らないユリカは、「レクイエム」と宣告し、左手を挙げる。スピードとパスワークであっさりチョウキンウンズのゴール前にはりつき、再び放つシュート技「オリオン・クロスバイパー」。円堂は馬鹿の一つ覚えでキーパー技「ダイヤモンドハンド」を繰り出す。再び後逸。
試合は0-3のオリオンリードで前半終了。
クラリオは試合強度を上げ過ぎたか、額に冷却材を貼っている。「敵の力は絶対的だよ。打つ手なしか」とマリクはしおれ、豪炎寺も打開策は無さそうな顔つきで目を閉じている。「正真正銘の実力だ」雰囲気が悪い中、杏奈からしっかりボトルを受け取っている様子の野坂だけがリア充だ。もっとも、発言は充実どころではない。「こちらを遥かに凌駕する力です」この状況にあっては、さしもの円堂も表情が硬い。
フィールドを見下ろすイリーナは、部屋の隅に縄を打った潜入者三人を並べたままニヤついている。
選手交代。チョウキンウンズの後半の開始メンバーは、FWにフロイ、灰崎、豪炎寺、MFに鬼道、明日人、野坂、一星、DFにルース、マリク、ハオ、GKは円堂据え置きとする。フレッシュなのが灰崎と一星だけで大丈夫なのか。
ユリカがさっそく攻め入る。立ちはだかるのは明日人。しかし、ユリカの起こした竜巻のような風にあおられて、くるくると回転しピッチに倒される。ユリカは8番の背中をボール越しに踏みつける。本格的に精神を折りに来たぞ! そして暗い目つきで「君たちはもう限界だ。無意味な抵抗はよせ」とどちらが軍や警察で、どちらがテロリストなのだかよくわからない威圧をする。さらに、立ち上がろうとする明日人を、今度は直に踏みつけて再び芝に這いつくばらせた。「立ち上がることは無意味だ。君たちが勝てる可能性はゼロなのだから」言葉を失うチョウキンウンズ。
ユリカはボールごと明日人を蹴り飛ばし、悠然と歩いていく。が、この程度のラフプレーでめげる明日人ではない。「待てよ。いいか、よく聞け」と、ユリカに負けず劣らずの声音で反論しながら立ち上がってくる。「立ち上がることが無意味だと言うなら証明してやる」蹴られた左肩を痛めたか? ユリカは平静を装い「へえ、何をかな?」と目も合わせない。もちろん、背を向けられてあしらわれた程度で、明日人が言葉を止めることはない。こいつの自我は強いぞ。「可能性がゼロでも、立ち向かい続ければ、ゼロは1となり、2となり、100にだってなれるんだ!」明日人の力強い発言に、豪炎寺、フロイ、マリク、鬼道がハッとする。「挑戦し続けることで、可能性は無限になる!」
まっさきに円堂が肯定。野坂が微笑み、灰崎も息だけで笑い、一星も瞳を輝かせて、明日人のもとに集まる。なおも無視し続けるユリカ。明日人の名を呼ぶ、チョウキンウンズに入れなかった選手たち。趙金雲が高笑いで「ここからが本番のようですね、ファイナルバトルの」と視聴者に話しかけてくる。
ED入りのBGM開始。オリオンベンチの感じの悪い大人どもが「諦めの悪い奴らです」「いや、まだ奴らはアルテミスの矢を隠し持っている」と意味深な会話。
ようやくユリカが明日人を振り向いたところで、EDへ。
次回の感想 第49話「フィールドの向こうに明日が来る」
前回の感想 第47話「最終決戦の日 それは始まった」へ
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